研究実績の概要 |
【背景】大動脈弁狭窄症の中で、左室内腔の狭小化、左室長軸方向収縮障害により一回拍出量が低下した例に見られ、予後不良とされる。 【目的】本研究は一回拍出量の低下した予後不良である大動脈弁狭窄症例においては、弁狭窄の因子に加えて、左室心筋機能障害ひいては左室心筋微小循環障害の程度や微小血管拡張予備能が術後の左心機能回復程度や臨床予後に影響を及ぼしているかを解明することである。 【方法】1)大動脈弁狭窄症症例全例に心臓超音波検査を施行し、大動脈弁弁口面積、平均弁間圧較差、左室駆出率、一回心拍出量を測定し、術後にも同項目を再評価する。2)重症大動脈弁狭窄症症例の治療前に温度センサー付きPressure Wire を用いて微小血管抵抗指標(IMR; index of microcirculatory resistance)、微小血管抵抗予備能比(RRR; resistive reserve ratio)の測定を行う。3)一回心拍出量の低下を来した症例と来さない症例のIMR、RRRを比較検討する。 【結果】術後6ヵ月に一回拍出量の改善した群7名と改善無群14名の間では、患者背景に差は認めなかった。またCFR、FFR、IMR、RRRに差を認めなかった。術前で一回拍出量の保たれている(SVI≧35ml/ m2)群では、術後一回拍出量の改善した群が非改善群と比べ有意にIMRが高かった(29.3±11.6 vs 17.1±6.3, p=0.027)。更に一回拍出量の改善率とIMRが正の相関を認めた(p=0.026, R=0.589)。一方、術前で一回拍出量の低下した母集団(SVI<35ml/m2)では、術後の各指標に差を認めなかった。 【結語】術後一回心拍出量が改善した症例と改善しない症例で術前の心筋微小循環障害や心筋微小血管拡張予備能に差を認めなかった。
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