研究課題
質量分析計による微量血液サンプルを用いたメタボローム解析にて、心不全に対する画期的な超早期診断システムの開発を目指すべく、本年度は下記の検討を行った。心房中隔欠損症患者においてカテーテル閉鎖術前および術後1か月での血清中の水溶性代謝物プロフイルをガスクロマトグラフィー質量分析計を用いて取得した。その中で我々はアミノ酸の一種である2-アミノ酪酸(2-AB)に注目し、病態における意義について検討した。治療前における2-ABの血中濃度は健常人より有意に高く、閉鎖術により健常人と同レベルにまで低下を示した。一方、臨床現場で心不全の病勢指標として用いられている脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)については治療前後でこのような関係は認めなかった。2-ABの生成経路について検討したところ、システインが合成される際に副産物として産生されることを明らかにした。システインはグルタチオンを構成するアミノ酸であり、酸化ストレス下でグルタチオンの合成が代償的に亢進した際に2-ABも増加することを心不全動物モデルおよび心筋細胞を用いた検討で明らかにした。2-ABはグルタチオンのホメオスターシス調節を反映しており、心臓における酸化ストレスを鋭敏に捉えることで心不全の超早期予知に寄与することが期待される。
2: おおむね順調に進展している
心不全特異的血中代謝物をプロファイリングすることにより、新規超早期診断システムの開発につなげるという目的に対し、一定の成果を上げている。
心不全患者より得られた血中代謝物プロフィールについてのデータベースが心不全の発症・進展の超早期予知に有用であるか、臨床所見や現在、臨床応用されているバイオマーカー、ならびに各種画像・生理学的検査所見との比較による前向き追跡研究を行う。
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