研究実績の概要 |
昨年度、我々はosteoprotegerin (OPG)の加齢に伴う心臓形態・機能への影響について検討した(Hao, Tsuruda et al. Cardiovasc Res. 2016)。本年度は、OPGとレニン・アンジオテンシン系の関連を明らかにすべく、8週齢の雄OPG-/- ならびに同週齢の野生型マウスにアンジオテンシンIIを28日間持続皮下投与し、両者を比較した。収縮期血圧は同程度に上昇したが(153±5 vs. 154±6 mmHg, mean±SEM, p=0.9074)、OPG-/-マウスの心臓重量が有意に増加した(8.3±0.6 vs. 6.4±0.2 mg/g, p=0.0097)。心臓超音波ではOPG-/-マウスの左室拡張期径は拡大し(0.293±0.024 vs.0.172±0.008 cm, p=0.002)、左室後壁厚は薄く(0.085±0.004 vs.0.097±0.003 cm, p=0.0431)、収縮率は低下した(43±3 vs.70±2%, p<0.0001)。また、シリウスレッド染色ではOPG-/-マウスは心筋間質の線維化に乏しく(0.2±0.1 vs. 2.9±0.8%, p=0.0034)、心筋細胞のTUNEL陽性アポトーシス数が増加した(7.2±1.8 vs. 0.8±0.4/40,000 nuclei, p=0.0091)。リコンビナントOPG製剤(10 mg/kg)をアンジオテンシンII投与下のOPG-/-マウス(n=22)へ28日間腹腔内投与すると左室収縮率は改善した(47±3% vs. 54±2%, p=0.0252)。本研究から、アンジオテンシンIIはOPG-/-マウスの遠心性左室リモデリングを促進させること、また、OPGが高血圧に対する心臓の構造ならびに機能維持に重要な役割を担っている可能性が示唆された。
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