研究実績の概要 |
平成29年度においては、膜電位イメージングの技法を駆使して、実験的心房頻拍モデル(頻拍様興奮: tachycardia-like excitation)における不整脈発現時における興奮波伝播パターンのmapping/imaging を進めた。昨年度本格導入した最新の受光素子であるscMOSカメラを用いて、興奮波伝播パターンの動画によるvisualization(可視化)を可能とする新しい画像処理技術の研究を動物実験と併行して進めた。その結果、測定技術開発の面ではコンピュータによるシグナル処理やコンピュータグラフィックス技術を駆使した興奮波伝播可視化のための技術を確立した。一方動物実験の面では、tachycardia-like excitation 誘発に関するproarrhythmic なcondition を作るための細胞内Ca2+ dynamics の擾乱を引き起こす実験(Ca2+過負荷、ouabain, ryanodine, blebbistatin などの薬物投与等)、および加齢ラットの実験を進め、不整脈発現時の興奮伝播パターンのmapおよび動画の作成をすすめた。 このような研究を通じて、補助事業期間全体を通じて、本研究では多数の不整脈のeventの可視化をおこない、複数のmicro re-entryと異常自動能のfociが不規則に存在する複雑な興奮波伝播パターンを示す"chaotic propagation pattern"の存在を明らかした。さらにそのなかで、これまでmappingが難しかった断片化した興奮波waveletの可視化に成功し、それがchaotic pattern形成において重要な働きをしていることを明らかにした。 これらの成果から、本研究で用いた実験系が心房性不整脈のin vitro modelとなり得ることが示された。
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