研究課題/領域番号 |
26461080
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
江原 省一 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 講師 (90382150)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 急性冠症候群 / 血栓 / 核磁気共鳴画像 / 光干渉断層像 / 不安定プラーク / 慢性完全閉塞 / 経皮的冠動脈形成術 |
研究実績の概要 |
冠動脈不安定プラークにみられる破裂・びらん、およびプラーク内出血、それに伴う内腔の血栓形成が、心筋梗塞、不安定狭心症、心臓突然死を包括した急性冠症候群 (acute coronary syndrome; ACS)の主たる原因であると考えられている。いったん、冠動脈に狭窄や閉塞をきたした虚血性心疾患の治療においては経皮的冠動脈インターベンション(percutaneous coronary intervention; PCI)の有用性が確立している。しかしながら、ACS患者の約半数は突然発症するため、非侵襲的な方法での心筋梗塞の予知・予防は世界的に重要な課題である。 われわれは近年進歩の著しい心臓(冠動脈)核磁気共鳴画像(magnetic resonance imaging; MRI)を用いて、非侵襲的に冠動脈内腔、プラーク、および血流情報を得ることに成功している数少ない施設である。われわれを含むいくつかのグループはすでにT1強調black blood whole heart MRI (T1-BB WHMRI)という撮像法を用いて、冠動脈壁の高信号を呈するプラーク(hyperintense plaque: HIP)の特徴を他のイメージングによるプラーク性状と比較し、HIPは冠動脈不安定プラークと関連していることを明らかにしている。 本年は研究をさらに発展させ、冠動脈疾患患者の冠動脈T1-BB WHMRIでのHIPの局在を解析し、冠動脈内腔を占有するHIPは血栓や新生血管と、また冠動脈壁に限局するHIPは石灰化が少なく、マクロファージの集積と関連することを示し、すでにpublishしている(Matsumoto K, Ehara S. JACC Cardiovasc Imaging 2015;8:1143-52)。さらに最近、狭心症患者の冠動脈責任病変のHIPの有無によるPCI治療中の末梢保護デバイス挿入後のno-reflow現象(filter no-reflow現象)と有意な相関を示すことを報告した(Matsumoto K, Ehara S. J Cardio 2015 in press)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年の目標である、狭心症患者におけるHIPの局在と不安定プラークの組織性状に関する論文と、PCIの際の末梢保護デバイスのfilter no-reflow現象の頻度に関する論文はすでにpublishされた。 現在は、HIPの由来はこれまで血栓やプラーク出血内のメトヘモグロビンとされており、またメトヘモグロビンの分解に伴いHIPは一定の期間で消失すると報告されている。生体内でのHIPの由来とその期限との関係を探るべく、冠動脈慢性完全閉塞の患者の閉塞期間とHIPの関係について検討しているところである。
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今後の研究の推進方策 |
これまで冠動脈慢性完全閉塞患者のHIP研究に関する症例はすでに集積されており、今後は解析、学会発表、論文作成へと進める方針であります。また、臨床研究から得られた疑問点を実験系にて実証する必要性があるため、現在冠動脈ファントムシステムを準備中であります。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究実績発表のための学会出席が国内にとどまり、海外発表の場がなかったことが一因です。また、これまでに多くのデータが集積しており、その解析、論文作成に仕事の重点を置き、かかった経費も少なかったと思われます。
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次年度使用額の使用計画 |
本年は、積極的に国内、および海外にこれまでの実績を報告・発表し、これまで以上にpublicationをしていきたいと考えております。そのために旅費、雑誌掲載料、英文チェックなどの経費に使用したいと考えております。
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