研究実績の概要 |
岩手県北地域コホート研究参加者の12誘導心電図 (ECG)所見をミネソタ・コード化し、将来の心血管疾患(CVD: 心筋梗塞・突然死・脳卒中・心不全)の発症との関連を明らかにすることを研究の目的とした。平成17年度に岩手県二戸医療圏で安静時ECGを含む健康診査を受け、岩手県北地域コホート研究参加に同意をした8,682名を研究対象 (男性3,100名、女性5,582名、平均62歳)とした。すでに岩手県予防医学協会技師と医師により判読され異常とされたECGを対象に、ミネソタ・コード化を実施した。解析されたミネソタ・コードを対象コホ-トの追跡結果データに加えデータセットを作成した。追跡期間(約2.7年)に発症したCVD(心筋梗塞・突然死・脳卒中・心不全)発症と以下の心電図異常例との関連を、ECG正常者と比較した。 ①心房細動・粗動(コード8-3) ②完全右脚ブロック(コード7-2) ③ST低下(コード4-1,4-2,4-3,4-4) ④陰性T波(コード5-1,5-2) その結果、 ECG異常例 (コ-ド1-0以外)は、6,078名 (70.0%)に見られ、ECG正常例(コード1-0)と比較し、心房細動・粗動例、完全右脚ブロック例、ST低下例、および陰性T波例で、CVD発症回避率は低下した (すべて、p < 0.05)。コックス比例ハザード回帰モデルを用いた年齢、性調節CVD発症ハザ-ド比は、心房細動・粗動例で約4倍、ST低下例で約3倍、陰性T波で約2倍だった。CVDを発症し易いことが明らかになった。 今回の結果から、地域健常住民の健康診査でのCVD発症のリスク特定にECG検査が有用であることを明らかになった。今後は、他のどのようなECG異常がリスクと関連するのか、また健診の必須項目である血圧、脂質などの因子や比較的新しい指標である高感度C 反応性蛋白などのバイオマーカーとECG 指標との組み合わせによるリスク集団の特定の可能性について明らかにすることで、ECG検査のスクリーニングとしての意義を体系的に明らかにできることが想定される。
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