研究実績の概要 |
マウスの検討において胎生期特異的心臓転写因子のうち、発現が上昇したものは2種類、低下したものは4種類、変化なしが7種類だった。上昇したもののうちHAND1は2日目にその発現がピークに, islet1 とc-Kitは7日目であった。次いでヒト左心耳において同様の検討を行った。症例を虚血性心疾患(IHD)と非虚血性(NIHD)に分類、それぞれの群における転写因子の発現を比較した。女性の割合はIHDが12%に対し、NIHDが40%とNIHDで有意に多かった。心機能はLVDd、LVDs、LVEFともに差を認めなかった。術前NYHAに差はなく、血清BNP値はIHD:227.1 pg/mL、NIHD:163.7 pg/mLとNIHDで高い傾向が認められたものの有意差は認めなかった。IHD群で糖尿病、脂質異常症、高血圧が有意に多く合併しておりスタチンおよびカルシウム拮抗薬の内服は有意に多くβブロッカーおよびARBの内服の割合に有意差は認めなかった。組織解析ではIHDで6因子の発現の減少が有意もしくはその傾向が認められた。caspase-3はNIHDで有意に高く、さらに炎症性サイトカインのうちIL-6がNIHDで有意に高値であった。TNFα、IL-1βの発現に差は認めなかった。また心臓から培養されたc-Kit陽性細胞は右心耳からのものが最も含有量が高く、次いで左心耳からのものであり、左室心筋からのものが最も少なかった。またc-Kit陽性細胞の発現量に影響する患者背景因子を検索したところ、術前のBNP高値が関連因子として抽出され心筋傷害の際にc-Kit陽性細胞が増加することが示唆されたが、その発現量はlow-BNP群 = に対しhigh BNP群で有意に高かった。また心房細動を合併している症例ではc-Kitの発現が有意に低下した。
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