研究実績の概要 |
本年度は昨年度に引き続き手術中に切除された左心耳とその周囲脂肪を解析した。本年度は左房に既にリモデリングを生じている症例として左房径が正常よりも大きい症例(>40mm)と正常内にあるものとを比較検討した。これらのうち術前より心房細動の既往があるものは除外した。全204例の解析の結果、正常左房径(NLA)は125例、拡大を示しているもの(DLA)は79例であった。年齢に有意差はなく、また男女差も認めなかった。平均左房径はNLA=34.7mm、DLA=46.9mmであり、DLAでは術前血清BNP値が有意に高く、また術前NYHAも有意に高かった。術前のエコーによる左室駆出率もDLA群で有意に低かった。その他、術前eGFRはDLA群で有意に低かったが、Creに差は認めず、また肝機能やその他の採血評価項目には差は認めなかった。 興味深いことに今回測定した炎症性サイトカイン(TNFα、IL-1β、IL-6)はいずれもその発現に有意差を認めなかった。さらにBNP遺伝子の発現にも差はなかった。ANP遺伝の発現にも差を認めなかった。 次に左心耳に含まれるミトコンドリア関連遺伝子を比較検討した。測定した遺伝子のうちND6: NLA=17.1 vs DLA=9.8, NDUFB8: NLA=7.5 vs DLA=3.8はDLA群で低下していた。一方でNRF-1、PGC1α、Tfam1,の発現には両群間に差は見られなかった
|