研究課題/領域番号 |
26461106
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
近藤 隆久 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 寄附講座教授 (00303644)
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研究分担者 |
平敷 安希博 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 寄附講座助教 (10418741)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 肺動脈性肺高血圧症 / 慢性血栓塞栓性肺高血圧症 / バイオマーカー |
研究実績の概要 |
肺高血圧は、特異的内服薬の出現により疾患の管理は著しく進歩し、生存率は大きく改善した。しかし一方では内服薬の出現により、むしろエポプロステノール導入のタイミングが遅れ手遅れになる患者が散見されている。現時点では、肺高血圧症を治癒する薬はなく肺血管病変は徐々に進行していく。肺血管床が一定以上閉塞消失すれば、もはや手遅れであり、エポプロステノールを導入しても治療効果は極めて乏しい。肺高血圧症の診断には、右心カテーテル検査を行うことがゴールドスタンダードであるが、疾患の重症度や治療に反応するバイオマーカーが存在すれば、きわめて有用と考えられる。 過去に入院歴のある肺動脈性肺高血圧症81名に対して、総死亡を予測するマーカーを検索した。初診時において、心臓著音波検査での心嚢水存在と、右心カテーテル検査んでの神経数2.5L/分/m2未満が、死亡率上昇を示すマーカーであった。 次に、肺高血圧症29名(肺動脈性肺高血圧症17名、慢性血栓塞栓性肺高血圧症12名)に対し、心肺運動負荷試験施行時のバイオマーカーを検索した。エンドセリン受容体拮抗薬の投与による自覚症状改善の有無と心血行動態について相関を示すマーカーを検索した。エンドセリン受容体拮抗薬投与後、ピーク時の呼気終末二酸化炭素濃度(PETCO2)が改善しており、有用なバイオマーカーであることが判明した。また、運動時の最大心拍数も、肺高血圧症の重症度を示すマーカーであった。 次に、肺高血圧症の患者5名に対して、心肺運動負荷試験・心臓超音波検査による右心機能検査、両心カテーテル検査による右室圧測定・左室圧測定、血流依存性血管拡張反応、トロンボモジュシン、血漿VEGF、血管内皮前駆細胞(EPCs)を初回入院時について測定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本疾患は特定疾患治療研究事業対象疾患であり、研究対象患者は基本的には少なく、患者組み入れまでに時間がかかってしまったため。 特定疾患治療研究事業対象疾患の難病であり、紹介時の診断がしばしば異なっていることがあったため、組み入れができなかった。 バイオマーカーの一つである血管内皮前駆細胞や血栓止血マーカーを再現性をもって測定する方法の確立に時間がかかったため。
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今後の研究の推進方策 |
現在では、紹介元の医療機関への教育も行い、初期検査を紹介元施設で、精密検査を当研究機関附属病院で行うことが可能となり、スムースに紹介可能となった。また、バイオマーカーの測定方法が再現よく確立でき、今後は症例を重ねてデータをつみあげていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究で研究対象としている肺動脈性肺高血圧症は、特定疾患医療受給者証交付件数から見た厚生労働省の統計では、平成25年度で全国に2587名と、稀な疾患である。また、確定診断も熟練した専門医の診断が必要である。私たちの研究グループでは、すでに東海地区の関連施設から肺動脈性肺高血圧症疑いの患者の紹介システムを確立している。しかし、実際紹介を受けた患者の殆どは、左心不全に伴う肺高血圧症や呼吸器疾患に伴う肺高血圧症であった。従って、現時点では患者登録の進捗が当初より遅れており、次年度まで患者登録を行う必要が生じた。その結果、次年度使用額が生じている。
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次年度使用額の使用計画 |
紹介された肺動脈性肺高血圧症患者に対して、両心カテーテル検査を行い、肺動脈血・大動脈血・混合静脈血・末梢採血サンプリングならびに左右の心室からの採血を行う。各部位にて測定したvWF、TM、t-PA、PAI-1,t-PAIC、 可溶性VE-cadherin、可溶性ICAM-1、可溶性E-セレクチン、可溶性PECAM-1、血漿VEGF、血漿BMP9/10、血管内皮前駆細胞の測定を行う。通常の診断・治療行為については、保険診療を行う。保険外診療に関して、研究室にて測定を行う。血液生化学測定用試薬・実験器具(シャーレ、試験管)・各種抗体などの消耗品として使用する予定である。
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