研究課題
植物油の加工過程で副産物として生じるトランス脂肪酸の過剰摂取は、心血管病の発症を増加することが証明され、欧米では規制対象となっている。しかし、多くの欧米の臨床研究では、トランス脂肪酸の危険性は推定摂取量に基づいて評価されており、血中濃度に基づいたものではない。本研究では、我国におけるトランス脂肪酸血中濃度の動脈硬化リスクを評価した。初年度は、日本人のトランス脂肪酸血中濃度を直接測定し、若年の冠動脈疾患患者で血中トランス脂肪酸濃度が高値であることを証明した。昨年度は、冠動脈疾患における動脈硬化プラーク性状と血中トランス脂肪酸濃度との関連性を検討し、プラークの脆弱性の指標である菲薄化した線維性被膜(TCFA)を有する患者は、有さない患者に比べて、トランス脂肪酸(エライジン酸)、トリグリセリド、RLP-Cの血中濃度が有意に高値であることを示し、多変量解析ではエライジン酸はTCFAの規定因子であることを証明した。本年度は、若年の冠動脈疾患患者を血中トランス脂肪酸濃度により四分位に分類し、主要の有無をカプランマイヤー法によって予後を検討したところ、トランス脂肪酸が高いと心血管イベントが増加することを証明した。すなわち、内服治療により古典的な危険因子が適切に管理されている冠動脈疾患患者でも、トランス脂肪酸濃度が冠動脈プラークの脆弱性と予後と関連し、残余リスクとなっていることが示唆された。トランス脂肪酸の動脈硬化促進作用の分子機序を解明するために、LDL受容体欠損マウスに高エライジン酸食と高オレイン酸食(対照)を負荷し、脂質代謝と動脈硬化病巣への影響を検討した。エライジン酸はオレイン酸に比べて、脂肪組織、筋肉、肝臓など多くの臓器に蓄積し炎症を惹起する。とくに、炎症性サイトカインの発現亢進とNADPH oxidase活性化による酸化ストレスの亢進により動脈硬化を促進することを証明した。
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