トロンビンにより切断されたNー末端のオステオポンチン(N-half OPN)が急性アテローム血栓性脳梗塞の血中バイオマーカーになりうるかを検討した。急性の虚血性脳梗塞患者を対象に、頭部MRI所見、心臓の評価の所見から急性脳梗塞の診断分類を行なった。そして、血栓性脳梗塞群と非血栓性脳梗塞群に分類した。来院時に血中N-half OPN、全長OPN(F-OPN)、matrix metalloproteinase-9 (MMP-9)、S100B、C-reactive protein (CRP)、D-dimerの測定を行なった。100人の虚血性脳梗塞患者のうち、原因がはっきりしない患者を除いた60名の患者で検討を行なった。虚血性脳梗塞患者の分類としては、アテローム血栓性脳梗塞が28名(46.7%)、塞栓性脳梗塞が19名(31.7%)、ラクナ梗塞が13名(21.7%)であった。N-half OPNとMMP-9の血中濃度は、非アテローム血栓性脳梗塞患者と比較してアテローム血栓性脳梗塞患者で有意に高値であった(N-half OPNの中央値がそれぞれ5.83 (0.0-8.6) vs 0.0 (0.0-3.3)、P=0.03、MMP-9の中央値がそれぞれ544 (322-749) vs 343 (254-485)、P=0.01)。高血圧、糖尿病、脂質異常症の頻度、N-half OPNおよびMMP-9を独立因子として多変量変量解析を行なったところ、N-half OPNが>5.47pmol/L (オッズ比 16.81、95%信頼区間 3.53-80.10)およびMMP-9>605.5 ng/mL(オッズ比 6.59、95%信頼区間 1.77-24.60)がアテローム血栓性脳梗塞の独立した規定因子であった。発症3時間以内の脳梗塞患者では、N-half OPNのみが独立した規定因子であった。したがって、N-half OPNはアテローム血栓性脳梗塞の早期診断マーカーとして有用を考えられた。
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