研究課題/領域番号 |
26461114
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
今西 敏雄 和歌山県立医科大学, 医学部, 博士研究員 (00285389)
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研究分担者 |
尾崎 雄一 和歌山県立医科大学, 医学部, 博士研究員 (00507999)
樽谷 玲 和歌山県立医科大学, 医学部, 学内助教 (60612942)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 急性冠症候群 / 単球 / 冠動脈プラーク |
研究実績の概要 |
急性心筋梗塞の生存例は、発症数週間から数か月後に心筋虚血イベントの発症率が著明に高いことが大規模臨床研究により明らかにされている。 本研究の目的は急性心筋梗塞発症後に冠血管プラーク病変の不安定化が加速度的に進展するかを検討することである。そのため、急性心筋梗塞後の単球サブセットの量的および質的変化に対する検討を計画した。対象は冠動脈形成術(PCI)の適応を有し、再灌流に成功したAMI患者を対象とし心筋梗塞後の非責任血管冠動脈プラークの病変進展と循環血中に動員される単球サブセットの量的・質的変化および臨床パラメーター・バイオマーカーの発現の程度の関連性について検討している。予想に反し心筋梗塞後の非責任血管プラークの病変進展は必ずしも一様に加速度的に進展するわけではなかった。この原因としてスタチン等の薬剤が影響している可能性が考えられた。このため再灌流に成功した40症例を対象に、スタチン系薬剤投与による末梢血単球サブセットおよび冠動脈の線維性肥厚を光干渉断層法(OCT)を用いて測定し、その影響を検討した。その結果、スタチン系薬剤の投与は炎症性単球を有意に低下させた。また、線維性肥厚の変化は炎症性単球と有意な負の相関関係にあることを明らかにした。急性冠症候群の多くは、軽度狭窄病変が不安定化し、主にプラーク破裂に伴う血栓形成により発症するが、一方、破綻したプラークの多くは無症候性に経過する。循環血中単球は、自然免疫反応の際に中心的に働くTLRなどのパターン認識受容体の細胞表面上の発現を増強することにより、病変局所の炎症および血小板との相互作用、すなわちP-セクレチンとその受容体であるP-セレクチン糖蛋白質リガンド1により、血栓形成が促進することが明らかにされているため。現在この関連性を網羅的に検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初、急性心筋梗塞後の非冠血管病変部のプラーク量および病変形態(thin-cap fibroatheroma (TCFA)等)を冠血管イメージング(OCT)で評価(急性期、6ヵ月後)し、他の虚血性心疾患(不安定狭心症や安定狭心症)と比較し冠動脈プラーク病変の不安定化の程度と比較検討を予定していたが、急性期のOCT画像にて血管栄養血管いわゆるVasa Vasorum(VV)が病変形態ごとにその形状が異なっている事を見いだした。近年、冠動脈の微小循環は注目されている病態であり、OCTの高い解像度がその形態の解明に寄与すると考えられる。VVと病変形態や炎症マーカーとの関連についての検討を共同研究者の樽谷医師により2014年のヨーロッパ心臓病学会や日本心臓病学会、2015年にVVと病態形態についての英語論文を投稿し(J Am Coll Cardiol 2015;65:2469–77)、2016年には日本循環器学会総会のシンポジウムで発表した。心筋梗塞後の冠動脈プラーク病変の不安定化冠動脈プラーク病変の進展と循環血中単球サブセットの質的変化との関連については、適当な症例が少なく、現時点ではまだ目標予定症例に到達しておらず結論は出ていない
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今後の研究の推進方策 |
心筋梗塞後の冠動脈プラーク病変の不安定化冠動脈プラーク病変の進展と循環血中単球サブセットの質的変化との関連については、上記のVVとの関連もふまえて今後検討する予定である。今後さらに症例を集積し、その最終的な解析ののち、英語論文として学術誌への投稿を目標している.
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度において研究計画に遅れが生じたため、予定の研究が施行できず未使用額が増加したため。
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次年度使用額の使用計画 |
心筋梗塞後の冠動脈プラーク病変の不安定化冠動脈プラーク病変の進展と循環血中単球サブセットの質的変化との関連に関する研究において、適当な症例が少なく、現時点ではまだ目標予定症例に到達しないため、研究計画に遅れが生じた。
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