腎臓5/6摘出術を行い、腎不全を呈するモデル動物Nxマウスを作成した。Nxマウスはシャム群に比べて、経時的に腎機能が低下し、血圧の上昇を認めた。腎機能障害モデルでは組織および血中のミッドカイン濃度の亢進を時間依存性に認めた。ミッドカインの濃度上昇は、組織学的検討、心エコー所見、心重量などで得られる心肥大に先立って出現していた。ミッドカインノックアウトマウスを用いてNxモデルを作成すると、同様に腎機能障害と血圧上昇を野生型マウスと同様に認めた。しかしながら、組織学的、超音波心臓図で得られる心肥大に関しては、野生型マウスに比べて優位に抑制されていた。ミッドカインの心臓肥大に与える効果を検討するために、新生仔ラットを用いて培養心筋での検討を行った。 培養心筋ではミッドカイン刺激により心肥大シグナルの亢進、すなわち、MAPK活性の亢進、BNP遺伝子発現の亢進、心筋細胞肥大を確認した。興味深いことに、これらのミッドカインによる心肥大シグナルは、EGFR依存性に認めた。SiRNAを用いてEGFRの発現を抑制したり、EGFR阻害薬で前処置するとミッドカイン刺激によるMAPK活性の上昇やBNP遺伝子発現、心筋細胞肥大が有意に抑制されていた。これらのことから、腎不全状態で血中で上昇するミッドカインは、心臓に作用しEGFRシグナルを介して心筋細胞肥大に関与している可能性を見出した。一方、腎機能や血圧上昇に関しては、ミッドカインノックアウトと野生型マウスでは、有意差を認めておらず、RAS系以外にミッドカインが心肥大に直接関与している可能性が得られた。さらに、NxモデルでEGFR抑制を行うと、心肥大シグナルが抑制されていた。以上から、腎臓由来のミッドカインがEGFRを介して心肥大シグナルに関与している可能性が示唆された。
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