研究課題
経皮的冠動脈形成術などによる再灌流は、急性心筋梗塞患者へのもっとも有効な治療法である。しかしながら、虚血後の再灌流により、活性酸素種の産生の亢進、カルシウムオーバーロード、炎症や細胞内のpHの変化などにより再灌流後も心筋傷害が持続することが知られている。加えて、高齢化により、心筋梗塞後の死亡率が依然高値であることからおり、新しい治療法の開発が求められている。我々は、全身臓器で発現しているものの、加齢に伴って減少するたんぱくSMP30に着目した。SMP30は心肥大モデル動物において心保護作用を持つことを明らかにしたが、SMP30と虚血再灌流傷害の関連は明らかでなかった。そこで、我々は、野生型マウスと、SMP30ノックアウトマウスに左前下行枝ligationによって30分虚血を行なったのちに、ligationを解除して再灌流モデルを作成し、心機能に関して検討を行った。左前下行枝結紮による虚血領域の大きさをエバンスブルー染色によって測定したが、両群に差がなかった。心筋梗塞サイズは、TTC染色を用いて行った。SMP30ノックアウトマウスは野生型マウスに比べて虚血再灌流後の心筋梗塞サイズが有意に大きかった。虚血再灌流により、血中のCK濃度は、虚血再灌流後に上昇していた。シャム手術では、野生型マウスとSMP30ノックアウトマウスに血中CK濃度に差を認めなかった。しかし、虚血再灌流後、血中CK濃度は野生型マウスに比べSMP30ノックアウトマウスで有意に高値であった。このことから、SMP30ノックアウトでは、虚血再灌流による心筋傷害が亢進していることが明らかとなった。そこで、心機能を超音波心臓図で検討を行った。予想通り、SMP30ノックアウトマウスでは、野生型マウスに比べ虚血再灌流後左室駆出率が有意に低下していた。
2: おおむね順調に進展している
虚血再灌流により心筋傷害が出現するが、SMP30の欠損によりその傷害が亢進することを動物モデルで明らかにしたため。
加齢のみでなく、糖尿病、脂質異常症などの代謝疾患合併状態でのSMP30の発現の変化とSMP30過剰発現による効果を今後検討していく必要がある。次に、SMP30がどのようにして心筋保護に作用しているかをアポトーシスや細胞内シグナル解析を行って検討していく。
インキュベーターの不良により培養実験を少し遅らせたためメディウムが予定より消費が少なかった。
培養実験の実験量を増やすことで、メディウム利用量が増加するため、それに充てる。
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