研究課題
経皮的冠動脈形成術などによる再灌流は、急性心筋梗塞患者へのもっとも有効な治療法である。しかし、高齢化によって心筋は容易に傷害されやすいことが知られており、加齢による心筋細胞機能低下の機序解明が求められている。昨年までの検討で、SMP30が加齢で低下し虚血再灌流後の心機能保持に作用することを明らかにしていることから、今期は他の刺激下でSMP30の発現が変化するか検討を行った。マウスモデルでは、タイプII糖尿病、高脂血症、インスリン抵抗性症候群においてSMP30の心臓での発現が低下していることを明らかにした。心筋細胞でも同様に、高血糖刺激、パルミチン酸刺激、酸化ストレスによって心筋細胞のSMP30は発現が低下していること、心保護作用のあるGSK3β活性が低下することを明らかにした。一方で、SiRNA SMP30を用いると、これらの変化が促進し SMP30 のtransfection で変化が抑制された。動物モデルでも同様に、SMP30の低下によってこれらの病的状態における心臓拡張指標の悪化、線維化が促進することを明らかにした。これらの変化はSMP30心臓特異的過剰発現マウスではこれらの変化が抑制されていることを明らかにした。さらに、これらの刺激による心機能低下にはHMGB1のアセチル化が関与していることを見出した。HMGB1の翻訳後修飾によりミトコンドリア機能が低下することをこれまで示していることを踏まえると、虚血再灌流時に心筋保護作用のあるSMP30の発現は加齢のみでなく脂質や糖代謝異常状態でも低下しており、HMGB1のアセチル化とミトコンドリア機能異常を介して心機能の低下に関与することを明らかにした。このことから、SMP30のターゲット分子を明らかにしていく必要があると考える。
すべて 2017 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件)
World Journal of Cardiology.
巻: 9 ページ: 457-465
10.4330/wjc.v9.i5.457.
Pacing Clin Electrophysiol.
巻: 40 ページ: 135-144
10.1111/pace.13003.
Heart Vessels.
巻: Dec ページ: Dec 29
10.1007/s00380-017-1113-1.