研究課題/領域番号 |
26461123
|
研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
磯 達也 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (10400756)
|
研究分担者 |
倉林 正彦 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00215047)
菱木 貴子 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (10338022)
小板橋 紀通 群馬大学, 医学部附属病院, 助教 (10420093)
山本 正道 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), その他 (70423150)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 心不全 / エネルギー代謝 / 脂肪酸 / グルコース |
研究実績の概要 |
脂肪酸取り込みが障害されるFABP4/5ダブルノックアウト(DKO)マウスやCD36 KO マウスの心臓では、エネルギー基質不足を補うために代償的にグルコース代謝が著しく亢進する。FABP4/5 DKOマウスとCD36 KO マウスにTAC による圧負荷を作成すると、TAC 後3週間でDKO マウスの20%が、CD36 KO マウスの50%が死亡した(野生型は100%生存)。生存したマウスも、DKO マウス・CD36 KO マウスともに心機能が著明に低下した。核医学実験やメタボローム解析などにより、以下の結果を得た。 (1)圧負荷により、KOマウス群でも、野生型と同様に心重量と線維化の増加が認められた。(2)圧負荷により、KOマウス群の18F-FDGの取り込みはさらに増加するが、解糖系の代謝産物の総和は野生型と同等であった。(3)TCA回路の代謝産物の総和は、KOマウス群で、野生型に比べて有意に低下し、それに一致して、PCr/ATP比の低下(ATP産生の低下)が認められた。(4)KOマウス群で多くのアミノ酸成分の増加が認められた。(5)KOマウス群でマロニルCoA/クエン酸比(脂肪酸合成)の増加が認められた。 心臓に圧負荷が加わると、圧に抗することのできる組織構築が必要になるため、タンパク合成や線維化が促進する。FABP4/5 DKOマウスとCD36 KO マウスでは、グルコース取り込みが著明に増加するが、圧負荷が加わった場合、増加したグルコース取り込みは、タンパク合成や線維化に優先的に利用され、さらに、脂肪酸取り込みが低下する分、脂肪酸合成(細胞膜合成)にも利用される。その結果、心肥大や線維化は生じるものの、エネルギー通貨であるATP産生は相対的に低下し、心収縮が低下するものと、推察された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ATeamノックインマウスは心筋細胞内のATPレベルを生きたまま、心臓丸ごと、1細胞レベルの高解像度で、高感度・高速反応性に定量的に評価することができるマウスである。このATeamノックインマウスとFABP4/5 DKOマウス、ATeamノックインマウスとFAT KOマウスを交配し、拍動する心臓のATP濃度をin vivoで測定した。残念ながら、圧負荷の有無により心臓のATP濃度の有意な変化は認められなかった。これは、細胞質のATP低下が、予備エネルギーであるホスホクレアチンにより直ちに補充されるため、見かけ上、ATP濃度に変化が見られないため、と推察している。
|
今後の研究の推進方策 |
1.ミトコンドリアのATPレベルをin vivoで評価する(ATeam1 mitochondriaノックインマウスを用いた解析) 細胞質のATPはホスホクレアチンにより補充されるため、ATP産生オルガネラのミトコンドリアと細胞質とではATP濃度変化に大きな乖離がある可能性がある。この問題点に対して、ミトコンドリア特異的にATP濃度が測定可能なATeam1 mitochondriaを利用する(共同研究者の山本正道が開発中)。このATeamマウスとFABP4/5 DKOマウス・CD36 KOマウスを交配し、圧負荷(TAC)の有無・時間経過によるミトコンドリアにおけるATPレベルの変動を拍動する心臓で測定し解析する。 2.脂肪酸取り込み低下に糖取り込み低下が加わった場合、心機能がさらに増悪するか。 ストレプトゾトシンの腹腔投与によりI型糖尿病を誘導した場合、心機能がどのように変化するか観察する。DKOマウスやCD36マウスにストレプトゾトシンを投与すると、I型糖尿病がないときに比べて、心機能はさらに低下すると予想している。観察される現象が、いずれの代謝経路障害の影響によるものなのか、メタボローム解析、フラクソーム解析、組織学的変化、脂肪酸組成(lipid profiling)、酸化ストレス反応、アポトーシス誘導、ATeamノックインマウスの解析により明らかにする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究分担者の山本正道が京都大学に赴任したばかりで、平成27年度の研究分担費を使用しなかったため。
|
次年度使用額の使用計画 |
平成27年度の繰越金は本年度、そのまま山本正道が研究分担費用として使用予定である。
|