研究課題
心臓に血行動態的負荷が加わると、心肥大(構造リモデリング)が生じると同時に代謝変化(代謝リモデリング)がみられる。構造リモデリングでは、心筋細胞が肥大し線維芽細胞が増殖し間質の線維化が増大する。代謝リモデリングでは、心肥大初期(代償期)より、脂肪酸酸化が減少し、グルコース取り込みが増加し、アデノシン三リン酸(ATP)の貯蔵エネルギー源であるホスホクレアチン(PCr)が減少する。脂肪酸取り込みが障害されるFABP4/5ダブルノックアウト(DKO)マウスやCD36 KO マウスの心臓では、エネルギー基質不足を補うために代償的にグルコース代謝が著しく亢進する。通常の生育下では心機能は正常に保たれるが、大動脈縮窄(TAC)による圧負荷を加えると、心収縮能が著明に低下した。代謝解析(核医学実験・メタボローム解析・フラクソーム解析など)を実施し、以下の結果を得た。(1)DKOマウスとCD36 KOマウスでも、圧負荷により、野生型と同様に心肥大と線維化の増加が認められた。(2)圧負荷により、DKOマウスとCD36 KOマウスのグルコースの取り込みはさらに増加するものの、TCA回路活性が低下し、それに一致して、PCr/ATP比の低下(ATP産生の低下)が認められた。(3)DKOマウスとCD36 KOマウスでグルコース由来のアミノ酸合成・脂肪酸合成・核酸合成の増加が認められた。以上、圧負荷により取り込みがさらに増加したグルコースは、ATP産生経路(TCA 回路、酸化的リン酸化)よりも、むしろ心肥大の構成分子(アミノ酸・核酸・脂肪酸)を合成するための非ATP 産生経路で優先的に利用されること、が明らかとなった。これらの結果から、ATP需要が増大する状況であっても、取り込みが増加したグルコースは、ATP産生(収縮・拡張)より圧負荷に抗する頑丈な構造リモデリング(心肥大・線維化)に優先的に利用され、そのために心機能が低下すると推察された。
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