研究課題
心不全は心臓ポンプ機能の低下により全身に充分量の血液を供給できない状態であり、不全心筋細胞では主なエネルギー産生経路が脂質代謝から糖代謝に移行する。糖代謝は脂質代謝と比較しエネルギー産生量が少なく、不全心ではエネルギー産生量の低下によりさらに心機能の悪化を招く。エネルギー産生量を増加させ、心筋細胞に充分量のエネルギーを供給することが心機能を改善させる1つの治療法となりうる。高脂肪低炭水化物食は脂質代謝を再活性化させ、エネルギー産生量を増加させると報告されている。今回の研究では心不全発症マウスに高脂肪低炭水化物食を負荷することでエネルギー産生量を増加させ、心不全の発症、進展を抑制できないか検討している。高脂肪低炭水化物食による心不全発症進展の抑制効果を検討するにあたり2種類の心不全発症モデルマウスを使用している。高血圧性心疾患モデルマウスと拡張型心筋症モデルマウスである。高脂肪低炭水化物食により高血圧性心疾患モデルマウスでは心肥大抑制、拡張型心筋症モデルマウスでは心機能保持効果を認めた。現在は高脂肪低炭水化物食による心肥大抑制、心保護作用の分子機序の解明を行っている。これまでにミトコンドリア関連因子、糖代謝、脂質代謝に関与する遺伝子発現をqRT-PCRで検討した。現在までに普通食摂食群と高脂肪低炭水化物食摂食群で有意な差を認める遺伝子の発見には至っていない。今後、炎症関連因子に関しても検討する予定である。
2: おおむね順調に進展している
高血圧心疾患モデルと拡張型心筋症モデルに高脂肪低炭水化物食を与え、それぞれのモデルマウスの心機能を評価した。両心疾患モデルで高脂肪低炭水化物食により心機能保持効果を確認した。2年目は主に高脂肪低炭水化物食の心臓保護効果の分子機序を明らかにするため、qRT-PCRで種々の発現を検討した。現在までに明らかな差異を認める遺伝子の発見には至っていない。機序の解明には至っていないが概ね当初の予定通り実験は進められており、実験経過は順調と考える。
通常食と治療食を比較し、明らかな差異を示す遺伝子の発見に至っていない。最終年度は代謝産物の差異に注目して実験を進めていく予定である。
最終年度は、高脂肪低炭水化物による心肥大抑制効果と心機能保持効果の分子機序の解明に焦点を絞り実験を行う予定である。そのために、これまでの2年間と同様マウスの購入、飼育費用に加え、ラット心筋細胞を用いたin vitroの実験を行う。また研究成果発表のため学会参加を予定している。
マウス、ラット購入飼育管理のために80万円計上する。分子機序解析のための実験試薬代に50万円計上する。研究成果発表のため、30万円計上する。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 4件)
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