研究課題
心不全状態にある心筋細胞では、主なエネルギー産生経路が脂質代謝から糖代謝に移行する。糖代謝は脂質代謝と比較しエネルギー産生量が少なく、不全心ではエネルギー不足によりさらに心機能が悪化する。不足するエネルギーを補い、心筋細胞に充分量のエネルギーを供給できれば心機能が改善するのではないかと考える。高脂肪低炭水化物食(HFLC)は脂質代謝を再活性化させ、エネルギー産生量を増加するという報告がある。今回の研究では心不全発症マウスにHFLCを与えることでエネルギー産生量を増加させ、心不全の発症、進展を抑制できないか検討した。HFLCによる心不全発症進展の抑制効果を検討するにあたり2種類の心不全発症モデルマウスを使用した。高血圧性心疾患モデルマウスと拡張型心筋症モデルマウスである。HFLCにより高血圧性心疾患モデルマウスでは心肥大抑制、拡張型心筋症モデルマウスでは心機能保持効果を認めた。通常食では圧負荷初期には嫌気的解糖系が亢進しエネルギー産生が保持された。同時に酸化ストレスの増加を認め、ミトコンドリアの形態に変化を生じた。一方、HFLCでは脂質代謝が亢進したが、予想に反しエネルギー産生量は低下した。酸化ストレスの増加は認めず、ミトコンドリア形態も保持された。3年間の助成期間で高脂肪低炭水化物食(HFLC)による心肥大抑制効果と心機能保持効果を明らかとした。またHFLCは心臓におけるエネルギー産生低下作用と酸化ストレス軽減作用、ミトコンドリア形態保持作用を有することを明らかにした。このような変化を引き起こすメカニズムは不明であり、今後RNAseqなどを用い遺伝子変化を網羅的に検討することでメカニズムの解明を目指す。
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