研究課題/領域番号 |
26461125
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
藤生 克仁 東京大学, 医学部附属病院, 特任助教 (30422306)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | マクロファージ / 不整脈 / アンフィレグリン |
研究実績の概要 |
心臓マクロファージの新規機能として不整脈への関与を検討した。これまでに心臓マクロファージは左心室への圧負荷時に代償性の心肥大を生じさせるために必須であることを報告した(Fujiu et al, Nat Med 2017)。心臓マクロファージに何らかの方法を障害を作成すると、心臓への圧負荷時に心臓の恒常性が維持できずに、心不全に陥ることを見出した。一方で、同様に心臓マクロファージに障害を加えた状態で、右心系に圧負荷を加えると短時間に不整脈を発症し、突然死することを見出した。このことは心臓マクロファージが不整脈発症に寄与していることを示唆した。 本研究では、心臓マクロファージの心筋細胞の興奮伝導への作用を検討した。心臓マクロファージ由来のアンフィレグリンは心筋細胞間のギャップジャンクション形成を促進して、心筋細胞間の興奮伝導を正に調節していることを見出した。特に、コネキシン43によるギャップジャンクション形成に対して効果を有していた。心臓マクロファージ由来のアンフィレグリンはその受容体である上皮増殖因子受容体を介してコネキシン43のリン酸化を促進し、リン酸化されたコネキシン43がギャップジャンクションを形成していた。アンフィレギュリンノックアウトマウスでは、コネキシン43のリン酸化が低下しており、ギャプジャンクション形成が低下しているため、心筋細胞間の電気的結合が低下し、完全房室ブロックを発症し、突然死を来したものと考えられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに、心臓マクロファージが心筋細胞間の伝導に重要であり、心臓マクロファージ由来のアンフィレグリンが心臓マクロファージと心筋細胞間の細胞間相互作用を司る因子であることを同定し、培養細胞を用いた実験およびアンフィレグリンノックアウトマウスを用いたin vivo実験によっても確認し得た。実験は当初予定していた通りに順調に進み、現在論文は投稿準備中である。投稿後に求められるリバイズに対してさらなる追加実験を行う予定である。また、経過中、マクロファージのアンフィレグリンを低下させる介入実験の目的で、アンフィレグリンノックアウトマウスの骨髄を野生型マウスの移植する骨髄実験モデルを用いたが、さらに心臓マクロファージが心筋細胞の細胞間の電気的結合を保持しているという仮説を検証するために、マクロファージ特異的なアンフィレグリンノックアウトマウスも作成しており、リバイスに備えている。 また、実験の経過中にコネキシン43がギャップジャンクション形成に関与しているのみならず、心筋細胞のミトコンドリアによるエネルギー産生に関わっている可能性も示唆された。このため、野生型マウスおよびアンフィレグリンノックアウトマウスから、心臓マクロファージをセルソーターでソートしRNAを抽出し、両者間の遺伝子発現解析を行い。心臓マクロファージ由来で心筋細胞のエネルギー賛成(ATP産生)を増加させる因子をすることをこころみている。また、これまでに得られた結果の一部については、日本循環器学会総会、米国心臓病学会で発表した。また、今年度、欧州心臓病学会でも発表予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、論文を発行することを第一目的とし、さらに今回の研究で得た知見を治療へ応用できないかどうか検討する。具体的には、アンフィレグリンの受容体は上皮増殖因子受容体であるが、アンフィレグリンが唯一のリガンドではない。例えば上皮増殖因子もリガンドであるが、アンフィレグリンと上皮増殖因子で心筋細胞においてギャップジャンクション形成に至るシグナル伝達経路などに違いがあるかどうかを検討する。さらに、上皮増殖因子受容体に対してアンフィレグリンのどの部分がコネキシン43をリン酸化するのに必須の領域であるかを同定したのちに、受容体のどの部分と作用することで受容体が活性化されるのかを明らかにする。さらにアンフィレグリンの作用部位を同定し得た場合、アンフィレグリンの全長タンパクではなく、一部のタンパクで抗不整脈作用を発揮できる場合には、そのタンパクの一部によるドラックデリバリー性について検討する。具体的には、truncated タンパクの安定性、投与経路の検討、作用する濃度の検討を行い、創薬につなげるための基礎的なデータを取得する。すでに上皮増殖受容体における上皮増殖因子の作用部位については同定されており、さらに上皮増殖因子特異的阻害薬が開発されているが、同様にアンフィレグリンの作用部位が同定できた際には、アンフィレグリンの作用をmimicするアゴニスト、逆に阻害するアンタゴニストを同定し、同様に創薬に向けた基礎的データを取得することを目標とする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
論文投稿後のリバイス実験のために、本研究費を使用したいため、1年研究期間を延長し、今年度に使用する。
|
次年度使用額の使用計画 |
論文投稿後に、レフェリーから指摘された内容に対して実験を行うが、分子生物学的な実験が主たるものとなることが予想される。また、追加実験を行った後に修正した英文論文の校正費および論文発行費に用いる予定。
|