低分子量RhoAは細胞骨格形成、細胞遊走など様々な細胞内機能を制御しており、その機能は高血圧、癌などの疾患発症に関与していることが知られている。低分子量RhoAが制御する細胞内シグナルが疾患については長年、研究されてきたが、低分子量RhoAおよびその下流で機能する分子の心臓での働きは不明な点が多い。 本研究では低分子量RhoAの標的分子であるRho関連キナーゼに注目し、Rho関連キナーゼの心臓内での新規標的分子を明らかにする。Rho関連キナーゼを検討することにより、心不全発症のメカニズムについて明らかにすることを目的とする。キナーゼは新規治療薬開発の点からも注目されており、本研究は創薬にむけた基盤研究になりうる。 最終年度である平成28年度は、心筋特異的Rho関連キナーゼ欠損マウスを用いて、in vivoにおける生理的な機能解析を進めた。Rho関連キナーゼ欠損マウスを最長1年間、経過を追ったが、特に生存率や心機能への影響は認めなかった。そこで、心不全モデルとして圧負荷心不全モデルを作成し、心不全時のRho関連キナーゼの役割について検討を行った。圧負荷心不全モデルでは、Rho関連キナーゼの活性化されることを確認した。Rho関連キナーゼ欠損マウスでは心肥大が抑制された。また、心臓超音波検査による心機能検査では心機能低下は抑制された。病理学的な評価では心臓の線維化も軽減されており、Rho関連キナーゼは心臓リモデリングに関与していることが示唆された。また、Rho関連キナーゼの新規基質を同定し、心不全発症との関連について検討した。
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