研究課題
・DNase II活性低下の原因の解明:昨年度に引き続き、DNase II発現調節に関わると思われる因子を検出する実験系の構築を進め、発現調節因子の同定を試みた。実験系の構築は進捗し、同定を試みたところ、いくつかの候補は得られたものの、明らかに発現調節因子と言える因子の同定にまでは至らなかった。・DNase II活性増強による心不全抑制効果の証明:昨年度に、alpha-Myosin Heavy Chain Promotor依存性に胎生期から心筋特異的にDNase IIを過剰発現するマウスと、CAGプロモーターの下流にloxP配列で挟まれたスペーサー配列を持ちその下流にDNase II遺伝子を組み込んだトランスジーンを有するトランスジェニックマウスの2系統のマウスを得た。今年度は、後者のマウスにタモキシフェン誘導性に心筋特異的にCre recombinaseを発現するトランスジェニックマウスを交配し、タモキシフェン誘導性に心筋特異的にDNase IIを発現するトランスジェニックマウスを得た。それらのマウスの繁殖を進めるとともに定常状態の表現型を観察した。定常状態ではいずれのマウスも明らかな心臓の異常を認めなかったため、現在、血行動態的負荷に対する表現型を検討しているところである。・ヒト心不全におけるDNase Ii活性低下の意義の解明:ヒトiPS細胞作製のための手続き、準備を進め、大阪大学医学部附属病院臨床研究倫理審査委員会の審査を受けて承認を得た。並行して、iPS細胞作製系の構築のための血液単核球単離および培養系の構築、初期化因子ベクターの入手ならびに増殖などを進めた。また、DNase II発現の変化の影響を確認するためCRSPR/Cas9システムによるゲノム編集をおこなう方針であり、その系の構築もおこなった。
3: やや遅れている
心不全におけるDNase II活性低下の原因検索については、実験系は構築されており、研究を進めているが、現在のところ明確な調節因子の同定にまでは至っていないが、今後の検索により同定に至る可能性が期待される。2DNase II活性増強による心不全抑制効果の証明については、心筋特異的DNase II発現マウスが順調に作成できており、計画通り圧負荷による表現型を確認中である。iPS細胞を用いたヒト心不全におけるDNase II活性低下意義の検討については、細胞作製のための臨床研究等の手続き、系の導入などの準備に手間取ったためiPS細胞作製が若干遅れている。
実施内容としては、計画通り推進する。心不全におけるDNase II活性低下の原因検索については、引き続き様々な分子について検討をおこない同定を目指す。DNase II活性増強による心不全抑制効果の証明については、心筋特異的DNase IIマウスの作製、解析を進める。当初計画ではアデノ随伴ウイルスベクターを作製しその治療効果を検討する計画であったが、マウスの系統数が多いこと、トランスゲニックマウスの解析の方が系として十分に確立しており成果が期待されることから、平成28年度もトランスゲニックマウスの解析に研究資源を集中する。iPS細胞を用いたヒト心不全におけるDNase II活性低下意義の検討については、平成28年度当初から既にiPS細胞作製を開始しており、心筋分化、表現型の解析を急いで進めていく方針である。
すべて 2015
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Nat Commun.
巻: 6 ページ: 7527
10.1038/ncomms8527