研究課題
我々は、ヒト心臓において、セマフォリン(SEMA)3A遺伝子I334Vにより、心臓の神経支配の変容が起こり特発性心室細動の発症に関与していることを推測した。しかし、SEMA3AI334Vにより心臓の神経支配の変容が起こる機序や、SEMA3AI334Vが浸透率が低く保因例においても無症候の症例がある理由については明らかにされていない。現在、SEMA3AI334Vが神経伸長を抑制する機序の検討を行っている。1) I334Vの存在により、SEMA3Aが二量体を形成しにくくなっている可能性があると考えた。SEMA3AI334VがSEMA3二量体形成に及ぼす影響を検討するため、Blue Native PAGEを用いてSEMA3AI334VとSEMA3AWTのダイマー形成の違いについて検討を行ったが、ダイマー形成に明らかな差異は認めなかった。2)I334Vの存在により、SEMA3AとSEMA3Aの受容体を構成するNrp-1との結合効率が悪くなっている可能性があると考えた。SEMA3AI334Vの受容体との結合効率を解析するため、SEMA3AとNrp-1との結合を Receptor binding assayを用いて解析を行った。しかし、SEMA3AとNrp-1との結合はI334Vの有無で差を認めず今のところメカニズムはまだ不明である。3)同時に、SEMA3AI334V保因例の中でも発症する症例としていない症例がある原因を検討中である。SEMA3AI334V保因例で、Hap Mapで登録があるSEMA3A TagSNP49個についてTaq Manを用いて検討を行っている。4)eQTLdataでSEMA3Aと発現量が関連する因子を検討している。
3: やや遅れている
現在、SEMA3AのTag SNPにつき解析中で、I334V保有例で、心室細動の発症の有無と他のSEMA3ASNPとの関連を検討する予定であったが、保有例が少ないため、nを増やすのに苦労している。
現在、特発性心室細動以外の疾患、同じく心室細動を発症するチャネル病であるブルガダ症候群や心房細動でもSEMA3AのSNPのタイピングを行っており、疾患による差異がメカニズムの解明につながる可能性がある。
症例のエントリーに時間がかかり、予定の計画より遅れ気味である。よって、次年度に使用額が生じており、引き続き研究を進めていく予定である。
引き続き他の不整脈疾患症例をエントリーして、採血、DNA分離、SEMA3AのSNP解析を行っていく予定である。またeQTLから相互関係がありそうな蛋白が絞り込めたら、その因子との関連も検討したい。DNAの分離、PCR、Tag SNP解析のためのプローブ作成などに使用する。得られた成果をまとめて発表など行う予定。
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Circ Arrhythm Electrophysiol
巻: - ページ: -
10.1161/CIRCEP.115.003436
Journal of Human Genetics
巻: 74 ページ: 1-5
doi:10.1038/jhg.2015.74
http://www.hiroshima-u.ac.jp/news/show/id/24743/dir_id/28