研究課題/領域番号 |
26461131
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
中野 覚 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (30420607)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 分子心臓学 / ナノメディシン |
研究実績の概要 |
急性心筋梗塞症(AMI)による全世界の年間死亡数は720万人であり、死因の第一位である。再灌流療法(PCIなど)の普及により、急性期の死亡率は減少した。しかし、再灌流そのものが不可逆的な心筋細胞壊死(再灌流傷害)を生じさせ、梗塞サイズの縮小効果を減少させる。つまり、現行の医療で最善を尽くしてもAMI患者の長期予後は依然として改善されない未解決の課題が存在する。従って、再灌流傷害を抑制する革新的心筋保護作用療法の開発は重要な医学的課題である。 現在に至るまで、再灌流傷害抑制薬の開発成功例はない。非臨床試験の段階で1) 十分な用量の検討がなされていない、2) 不適切な疾患モデル(麻酔下、開胸)を用いていたことが原因であり、再灌流傷害抑制薬を実用化するには、より患者の病態に近い疾患モデルを開発し、臨床応用を見据えた非臨床試験を実施することが重要である。 我々は、ナノ医工薬学に基づいた生体吸収性ポリマー(PLGA)ナノ粒子によるナノ薬物送達システム(ナノDDS)を開発してきた。 マウス虚血再灌流モデルにおいて、ナノ粒子を再灌流時に静脈内投与すると、虚血部位に選択的に集積することを確認した。また、虚血時の活性酸素産生を模した二酸化水素刺激培養心筋細胞およびマウス心筋虚血部位においてミトコンドリアに選択的に送達されることを見出した。 さらに、患者の病態に近い虚血再灌流傷害の超低侵襲非臨床ブタモデルの開発を試みた。ミニブタを用いて、深 麻酔下において外科的に左回旋枝にカフオクルーダーを巻き、術後のケアを行い、覚醒後にカフオクルーダーを閉塞させるとST上昇が認められた。さらに、解剖学的にも心筋梗塞が生ずることを明らかにした。以上の結果から、麻酔薬による心筋保護や血行動態への影響を無くすために覚醒、安静時に心筋虚血再灌流傷害が可能な超低侵襲非臨床ブタ虚血再灌流モデルの開発に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、ヒトの病態に近い心筋虚血再灌流傷害の覚醒下ミニブタモデルの開発に成功した。過去のブタモデルにおいてはモデル作製時(再灌流時)に致死率が3割から4割と報告されているが、本モデルでは致死率は1割以下であった。以上のことから、本モデルは心筋虚血再灌流傷害の薬効薬理試験に最適な疾患モデルであると言える。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度に開発に成功した疾患モデル動物を用いて、すでにマウスモデルで有効性が認められたミトコンドリア保護作用を有するCsA-NPおよびMdivi-1-NPの薬効薬理試験を行い、臨床試験での最適な用量・用法を探索し、ブタ非臨床POCを取得し、臨床試験への橋渡しを行う。
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