研究課題
急性心筋梗塞症を含む冠動脈疾患による全世界の年間死亡数は720万人であり、死因の第一位である。しかし、再灌流そのものが不可逆的な心筋細胞壊死(再灌流傷害)を生じさせ、梗塞サイズの縮小効果を減少させる。従って、再灌流傷害を抑制する革新的心筋保護作用療法の開発は重要な医学的課題である。より患者の病態に近い疾患モデルを開発し、臨床応用を見据えた非臨床試験を実施することが重要である。シクロスポリン(CsA)はミトコンドリアのCypDに結合し、mPTPの開口を抑制する。従って、再灌流傷害の抑制にはミトコンドリア保護が問題解決のための適切なアプローチである。我々は、ナノ医工薬学に基づいた生体吸収性ポリマーナノ粒子によるナノ薬物送達システムを開発してきた。心筋虚血再灌流傷害に対する超低侵襲非臨床ブタモデルの開発を行い「ミトコンドリア標的ナノDDS医療」の実用化を目指す。ミトコンドリア標的ナノDDSの開発により、ミトコンドリアの機能異常に起因する様々な疾患への革新的医療が実現される。覚醒後(閉胸、安静時)、カフオクルーダーを閉塞させるとST上昇が認められ、解剖学的にも心筋梗塞が生ずることを明らかにした。さらに、麻酔薬による心筋保護や血行動態への影響を無くすために覚醒、安静時に心筋虚血再灌流傷害が可能な超低侵襲非臨床ブタ虚血再灌流モデルの開発に成功した。また、マウスモデルで有効性が認められたミトコンドリア保護作用を有するCsA-NPおよびMdivi-1-NPを上記モデルを用いて、臨床試験での最適な用量・用法を探索して、ブタ非臨床POCを取得した。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画通り、ヒトの病態に近い心筋虚血再灌流障害の覚醒下ミニブタモデルの開発に成功した。過去のブタモデルにおいてはモデル作製時(再灌流時)に致死率が30%から40%と報告されているが、本モデルでは致死率は10%以下であった。以上のことから本モデルは心筋虚血再灌流障害の薬効薬理試験に最適な疾患モデルであるといえる。本疾患モデル動物を用いて各種薬剤封入ナノ粒子の有効性と安全性を明らかにすることができた。
すでに開発に成功した疾患モデルを用いて、すでにマウスモデルで有効性が認められたミトコンドリア保護作用を有するシクロスポリンナノ粒子、Mdivi-1封入ナノ粒子の最適化研究および薬物動態試験等を行い、臨床での至適用量を探索し、臨床試験への橋渡し研究を実施する。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 備考 (1件)
Sci Rep.
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http://www.med.kyushu-u.ac.jp/cardiol/1_sentaniryo/