研究課題
昨年度は、大動物心不全モデルを用いて、慢性腎不全用剤である炭素微粒体(AST-120)投与が腎機能低下および血中インドキシル硫酸濃度増加を抑制し、左右心臓カテーテル検査および心臓超音波検査で評価した心不全の病態を改善させることを明らかにした。本年度は昨年度の実験で得られた心筋検体を用いて、AST-120の心不全の病態改善のメカニズムを検討した。対照群における心筋組織は正常心筋組織に比しAKTリン酸化レベルの低下およびERKリン酸化レベルの亢進が認められたが、AST-120経口投与群における心筋組織ではAKTリン酸化レベルの低下が認められずERKリン酸化レベルの亢進が抑制された。対照群における心筋組織は正常心筋組織に比しBax/Bcl-2比の増加が認められたが、AST-120経口投与群における心筋組織ではBax/Bcl-2比の増加が抑制された。対照群における心筋組織は正常心筋組織に比しTGF-β1発現レベルの亢進が認められたが、AST-120経口投与群における心筋組織ではTGF-β1発現レベルの亢進が抑制された。対照群における心筋組織のTUNEL-positive nucleiは0.94±0.17%であったがAST-120経口投与群のTUNEL-positive nucleiは0.28±0.05%であった。対照群における心筋組織のCollagen volume fractionは4.63±0.61%であったがAST-120経口投与群のCollagen volume fractionは1.92±0.26%であった。これらの結果より、慢性腎不全用剤であるAST-120投与は、不全心筋においてAKTリン酸化レベル低下を抑制しERKリン酸化レベルの亢進を抑制することで心筋アポトーシスおよび心筋線維化を抑制し、心不全の進展を抑制することが明らかになった。
2: おおむね順調に進展している
本研究は、臨床応用を見据えた前臨床段階研究として、詳細な血行動態の評価が可能な大動物心不全モデルにおいて、1) 慢性腎不全用剤である炭素微粒体(AST-120)投与が腎機能低下および血中インドキシル硫酸濃度増加を抑制し、心不全発症と進展を抑止するか否か、2) そのメカニズムを明らかにし、3) 慢性心不全症例を対象としてAST-120 投与による心機能への効果を検討することで、新しい心不全治療法を開発することを目的とする。本年度の研究実施計画は、大動物心不全モデルにおける慢性腎不全用剤である炭素微粒体(AST-120)の心不全改善効果のメカニズムを検討することであったが、研究実績の概要に示したように、大動物心不全モデルにおいてAST-120投与による心不全の病態の改善効果のメカニズムを明らかにすることができた。
本研究は、臨床応用を見据えた前臨床段階研究として、詳細な血行動態の評価が可能な大動物心不全モデルにおいて、1) 慢性腎不全用剤である炭素微粒体(AST-120)投与が腎機能低下および血中インドキシル硫酸濃度増加を抑制し、心不全発症と進展を抑止するか否か、2) そのメカニズムを明らかにし、3) 慢性心不全症例を対象としてAST-120 投与による心機能への効果を検討することで、新しい心不全治療法を開発することを目的とする。昨年度の検討により大動物心不全モデルにおいてAST-120投与が心不全の病態を改善することが明らかになり、本年度の検討により心不全改善効果のメカニズムを明らかにすることができたことから、今後は慢性心不全症例を対象としてAST-120 投与による心機能への効果を検討することで、新しい心不全治療法を開発することを目的とする。
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