研究課題/領域番号 |
26461135
|
研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
尾上 健児 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (90510173)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 循環器・高血圧 / 遺伝学 |
研究実績の概要 |
特発性心筋症は、近年次第に原因となる遺伝子異常やそれに関わる発症機序が明らかにされ、その病態が明らかにされてきている。その一方で実臨床における治療手段としては、薬物療法や機械的補助といった対症療法に限定されており、原因療法の開発が待ち望まれている。近年、遺伝子やその転写産物をターゲットにした新規治療法が考案され注目を集めている。本研究の目的は、遺伝性拡張型心筋症や蓄積病を呈するマウスモデルを対象に、遺伝子異常により不足する正常タンパク質をメッセンジャーRNAを補充することにより補い、病因を克服することによる原因治療を試み、特発性心筋症治療法に新たな道を切り開くことである。 現在、拡張型心筋症モデルマウスへの野生型mRNA導入に取り掛かっている。mRNA内包高分子ミセルの投与経路は、成獣では冠動脈投与が最適であることが判明し、冠動脈からの投与を行うと決定している。その後、拡張型心筋症を発症するモデルマウスであるLmna遺伝子ノックアウトマウスに対し、正常野生型Lmna mRNAを投与し治療効果を検証する段階である。正常野生型Lmna mRNA作成にあたり、T7プロモーターの下流に正常野生型マウスLmna遺伝子を組み込んだプラスミドを作成し、in vitroトランスクリプションによるmRNAを作成し、培養細胞に導入の上、正常野生型タンパクの発現を確認しているが、この人工的mRNA産生手法では野生型 Lmna mRNA産生がうまく行われず、現在プラスミドの再デザインを行っている。 また同時にHeterozygous KOマウスに対するmRNA補充による表現系改善を観察する予備実験として、同マウスに対しアンギオテンシンIIの投与を行い、圧負荷による心への影響を心エコーによる形態評価およびRNAシーケンスによるトランスクリプトーム解析を行っている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成26年度報告でも記載した通り、まず研究実施計画の第一段階であるマウス心組織へのmRNA導入法の確立において、その投与経路の確立に時間を要した。これについては、冠動脈からの投与経路が最適であり、その手法を確立した。しかしながら、研究実施計画の第二段階である正常野生型mRNA投与段階において、人工的mRNA生成が計画通り進まず、試行錯誤を繰り返している状況である。平成27年度計画内の実施可能な部分は同時並行で進めているが、これらの理由により全体の研究計画に遅れが生じている。
|
今後の研究の推進方策 |
現時点では引き続き、拡張型心筋症モデルマウスへの野生型mRNA導入に取り組んでいる。正常野生型mRNAの作成をノウハウを有している連携研究者とともに試行錯誤を繰り返しながら行っている。培養細胞での正常野生型ラミンタンパク発現確認の後、拡張型心筋症発症モデルマウスに正常野生型Lmna mRNAを投与し、その心機能や生命予後を評価するとともに、アンギオテンシンII投与による圧負荷条件下での拡張型心筋症早期発症におよぼす正常野生型Lmna mRNA投与による表現形改善効果を検証する予定である。その構造的理由等により人工Lmna mRNAがうまくいかない場合は、同一アミノ酸をコードするコドンを変更するコドン最適化作業を行い、人工Lmna mRNA作成を試みる。この操作も奏功しない場合は、Lmna遺伝子異常から拡張型心筋症発症に至る経路に関わる別の幾つかの分子にターゲットを切り替え、それら分子の発現を正常野生型と同一になるようRNA投与による介入を行い、心筋症診療における新規治療法の確立を目指す。
|