研究課題/領域番号 |
26461136
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研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
廣谷 信一 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (20584220)
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研究分担者 |
岩破 俊博 兵庫医科大学, 医学部, 助教 (00648230)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 分子心臓病学 / 圧負荷ストレス / 脂肪酸代謝 |
研究実績の概要 |
野生型マウスおよびIL-18ノックアウトマウスに対して、大動脈縮窄術による急性圧負荷ストレス負荷を行った。急性圧負荷ストレスに対して、野生型マウスは耐性を示したが、IL-18ノックアウトマウスでは、不耐を示し、有意に高い死亡率を示した。また、心エコーで心機能を調べたところ、野生型マウスでは、左室内腔の拡大、心収縮能の低下は認められなかったが、一方IL-18ノックアウトマウスでは左室空の拡大、心収縮能の低下が認められた。
圧負荷に対する細胞内情報伝達機構を調べたところ、野生型マウス、IL-18ノックアウトマウス間で、MAPKファミリー分子のリン酸化には有意な差は認められなかった。一方で野生型マウスに認められるAkt、AMPKのリン酸化が、IL-18ノックアウトマウスでは認められなかった。
AMPKはエネルギーが枯渇した状態で、ATPを産生するシグナルを活性化させ、ATPを消費するシグナルを不活化する働きを持つ。そこで、心筋の主要なATP産生源である脂肪酸代謝について注目をした。そこで、長鎖脂肪酸のβ酸化の律速酵素であるCPT-1B (carnitine palmitoyltransferase 1B)のRT-PCRを施行した。野生型マウスでは、圧負荷ストレスでCPT-1Bは増加するが、IL-18ノックアウトマウスではその発現が減少することが分かった。CPT-1Bヘテロノックアウトマウスでは、IL-18ノックアウトマウス同様に、圧負荷ストレスに不耐用が報告されており、今後、IL-18ノックアウトマウスでの脂肪酸代謝能を調べる予定としている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
IL-18ノックアウトマウスにおいて脂肪酸代謝の律速酵素の発現が有意に低下する異常を見出した。急性圧負荷ストレス不耐容の原因である可能性が明らかにできた。
すでに、種々の臓器や細胞で遊離脂肪酸が細胞毒性を持つことが報告されている。遊離脂肪酸の細胞毒性として認められる現象を、野生型マウスとIL-18マウス間で比較検討し、IL-18マウスで遊離脂肪酸によることに矛盾しない細胞毒性を調べる前段階まで到達しているから。
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今後の研究の推進方策 |
CPT-1Bは細胞質に存在する遊離脂肪酸をミトコンドリア内に輸送する律速酵素である。そのため、IL-18ノックアウトマウスは圧負荷ストレス下で、遊離脂肪酸代謝が低下する可能性が考えられる。
遊離脂肪酸は、両親媒性のため、大量に存在すると、洗剤作用(界面活性作用)により、細胞膜を溶解させ、細胞を破壊する。また、遊離脂肪酸によりinducible nitric oxide synthase(iNOS)の発現が誘導され,増加したnitricoxide(NO)によって細胞のアポトーシスが引き起こされることも知られる。
脂肪酸代謝低下によるエネルギー供給障害と、遊離脂肪酸が細胞質に増えることによる直接の毒性の両面を野生型マウス、IL-18ノックアウトマウス間で比較することにより、急性ストレス耐容におけるIL-18の役割を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
分担研究者の岩破が、2014年9月から2015年3月まで兵庫医科大学 篠山医療センター勤務となり、基礎研究に従事する十分な時間が取れなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
昨年度施行予定だった14Cでラベルされたパルミチン酸を用いた心筋の遊離脂肪酸のβ酸化についての研究を本年度にずらして行っており、平成26年度の余剰分は本年度14Cでラベルされたパルミチン酸購入に使う。
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