研究課題
本年度は心筋特異的SOCS3ノックアウトマウス (SOCS3-cKO)と野生型マウス (WT)を用いて、生後8、24、36週目に心エコーによる心機能評価、H&E染色による心筋障害とシリウスレッド染色による線維化の評価、ウエスタンブロットによるシグナル伝達経路の活性化の評価とオートファジーに関する評価を行った。SOCS3-cKOマウスは生後24週目には左心収縮能の低下と左心室径の拡大を認めた。組織染色ではSOCS3-cKOマウスにおいて心筋細胞のthinning、脱落を認め、WTマウスと比較し優位に間質の線維化の増加を認めた。SOCS3-cKOマウスはWTマウスに比べSTAT3のリン酸化が後24週目以降に増強し遷延化していた。ERK1/2とAKTのリン酸化は著編なかった。オートファジーの評価をLC3 (microtubule-associated protein 1 light chain-3)のウエスタンブロットにより行ったところ、WTマウスに比べSOCS3-cKOマウス心臓のLC3-II/ LC3-Iが低値であり、オートファジーが傷害されていることが示唆された。オートファジーを調節する分子であるparkin、PINK1、P62/SQSTM1、Bnip3などのウエスタンブロットにより測定したところ、parkinとPINK1の発現がSOCS3-cKOマウスで優位に低値であった。P62/SQSTM1とBnip3の発現は明らかな差を認めなかった。これらの結果より、SOCS3-cKOマウスでは加齢に伴い次第にSTAT3が活性化し、parkinとPINK1の発現が抑制されオートファジーが傷害され拡張型心筋様の左心収縮能の低下を来すと考えられた。
2: おおむね順調に進展している
申請時に計画した実験はほとんど行うことができ、また、表現型や細胞死の評価も順調に進んでいる。
電顕により、ミトコンドリア障害やオートファジーを示すオートファゴソームの所見を観察し、野生型マウスと比較評価する。左心収縮不全を起こす直前のSOCS3-cKOマウス心臓を用いてジーンチップ解析を行う。これにより、特に細胞死、オートファジーに関する遺伝子プロファイルを作成し野生型マウスと比較評価する。左心収縮不全を発症する前のマウスを飢餓状態としオートファジーを誘発する。このときの心機能を心エコーで評価し野生型マウスと比較評価する。
支払いによって生じた少額の余剰金である。
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