研究課題/領域番号 |
26461138
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研究機関 | 独立行政法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
瀬口 理 独立行政法人国立循環器病研究センター, 病院, 医師 (60570869)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 心不全 / 創薬 |
研究実績の概要 |
本研究課題は①「ヒト心不全症例におけるcardiac-MLCK‐ミオシン軽鎖シグナル解析」と、②「cardiac-MLCK活性調節剤の同定、開発」の二つの研究計画を軸に行っている。 研究計画①は国立循環器病研究センターにおいて補助人工心臓(LVAD)装着手術をうける重症心不全症例の手術時に得られる左心室心尖部心筋検体をもとに遺伝子発現、タンパク発現解析を行うこととしている。現在、左室心尖部心筋サンプルを順次収集しているが、得られる検体量は数百ミリグラム~数グラムとばらつきがあり、本研究課題以外での使用目的もあるため、まずは大量の検体が得られる心臓移植時の摘出不全心筋を対象に遺伝子発現解析を行っている。移植時摘出心は心臓全体が得られるため、左室の一部の検体についてμアレイ解析を行い、cardiac-MLCK遺伝子の発現とともに、網羅的な遺伝子発現パターンについての解析を行っている。現時点ではLVAD装着下に心臓移植を受けた症例の心筋では一部に対照とする正常心に近い遺伝子発現パターンを示していることが明らかとなっており、臨床的において時に経験するLVAD装着による不全心筋の回復現象を示唆するものと考えられる。そのような症例では一部にcardiac-MLCK遺伝子の発現パターンにも変化を示しており、現在LVAD装着時に得られた心筋サンプルの解析結果を合わせ、病態との関連についての解析を行っている。 研究計画②については合成されたcardiac-MLCKと相互作用する特殊ペプチドに関してそのcardiac-MLCKリン酸化活性制御作用をin vitro kination assayを用いて行った。現在までで8種類のこれら特殊ペプチドは程度の違いこそあれ、cardiac-MLCKリン酸化活性を抑制する結果が得られており、現在この結果についての再現性を確認を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画①については当初の予定ではLVAD装着時に得られる不全心筋検体をもとに遺伝子発現解析を行うこととしていたが、実際に解析を行う時点において検体量の問題や、それら検体すべてを使用することができないことが判明した。そのため現在は研究計画には記載していないが、心臓移植時のレシピエント摘出心検体を用いての遺伝子発現解析(マイクロアレイ解析)を行っている。しかしながら、この解析により、これまで臨床的に報告のあった”LVAD装着による不全心筋の機能回復”によると思われる”不全心筋における遺伝子発現パターンの正常化”という現象を見出すことができた。またこれら不全心筋の昨日回復現象に関連してcardiac-MLCK遺伝子発現パターンにも一定の特徴的な変化を見いだしつつあり、cardiac-MLCKにかかわるシグナルの不全心筋における新たな知見につながる可能性があると期待している。 研究計画②については本研究課題申請時にすでに合成されていた”cardiac-MLCKと相互作用する特殊ペプチド”のcardiac-MLCKリン酸化活性制御作用の一端をin vitroではあるが、明らかにしつつある。現時点で得られている結果では8種類すべてのペプチドにおいて、程度の差はあるものの、cardiac-MLCKリン酸化活性を抑制することが示されている。今後、結果の再現性を確認することが求められるが、当初の目標としての”in vitroでの活性制御作用有無の確認”についてはほぼ達成されたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画①については「研究実績の概要」「現在までの達成度」において記載したように、当初の研究計画には記載のない検体の解析を行わざるを得なかった。当初計画に記載していない”心臓移植時のレシピエント摘出心”を解析に用いたことに関しては研究計画の変更として認識しており、当初の計画通りのLVAD装着時の左室心尖部不全心筋サンプルの解析とともに新たな研究計画として組み込み、継続していく予定としている。 研究計画②については、現在得られている”in vitroにおける合成ペプチドのcardiac-MLCK活性抑制作用”の再現性確認を行い、当初の計画通り合成ペプチドの調製、最適化とともに大量合成へと進めてゆく。さらには細胞レベルでの実験により細胞内透過性の確認などを行い、順次in vitroからin vivoへの活性制御作用の確認を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
今回、平成26年度に予定していた予算を使用できなかった理由としては”研究実績の概要”にも記載した通り、当初の研究計画として予定していた補助人工心臓装着時に得られる左室心尖部不全心筋サンプルの解析時に、検体量の問題等について調整する必要があり、実際の解析が遅れたことがあげられる。実際の解析の開始が遅れたことにより、本来平成26年度に購入予定であった必要物品は購入せず、平成27年度以降の購入予定とした。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度は研究計画①の不全心筋検体のマイクロアレイ解析、タンパク解析を継続することを予定している。mRNA調製用の試薬、抗体、実験にかかわる消耗品の購入などを予定している。 研究計画②についてはin vitroリン酸化アッセイによる合成ペプチドのcardiac-MLCKリン酸化活性抑制効果の再現性確認実験のため、泳動試薬、泳動ゲル等の実験にかかわる消耗品を購入する。
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