研究課題
筋ジストロフィー(筋ジス)、心筋症など筋細胞変性疾患全般に有効な治療薬の開発を目指している。そのため筋変性疾患に共通のリスクファクターを見つけることは重要な課題である。筋ジスにおける筋細胞内は恒常的にCa2+が上昇した状態にあり、その要因の1つとして標的イオンチャネルを介するCa2+流入が重要であることをモデル動物を用いて明らかにしてきた。チャネルを阻害する抗体、N末端ドメインによる標的チャネル形質膜濃縮の抑制が筋ジス、心筋症に有効であることを報告してきた。筋変性は悪性腫瘍によっても誘導され(癌悪液質)筋肉の委縮、機能低下を伴うことが知られている。癌悪液質筋委縮においてジストロフィン量が減少することが報告され(Cancer Cell 2005)、筋ジスと同様の筋変性機構が存在していることが示唆されたがその詳細並びに治療法は未だ不明である。筋ジスにおける筋変性で関与が認められた標的チャネルおよびCa2+異常が癌悪液質筋委縮にも関与するかを検討した。また、市販薬のスクリーニングで同定されたチャネル阻害薬(トラニラスト)の有効性を癌悪液質筋委縮、心筋症、重症心不全動物モデルを用いて検討した。標的チャネルがあまり関与しないことが判明した癌悪液質による筋委縮にはチャネル阻害剤(トラニラスト)の効果が認められなかった。他方、標的チャネルの関与が示唆されている心筋症ハムスター、糖鎖異常の心筋症マウスの心筋収縮機能の悪化はトラニラスト投与により抑制された。標的チャネルが関与する筋変性の阻害にはチャネル阻害剤が有効であることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
標的とするイオンチャネルが関与する筋変性とあまり関与しない筋変性があることを明らかにしたため治療標的が絞られた。
標的チャネルの生理的意義の解明を中心に研究したい。
予定していた交通費が招待講演となりいらなくなった。
次年度、成果の発表のための交通費として使用する。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件) 産業財産権 (3件)
JOURNAL OF PHYSIOLOGY
巻: 593 ページ: 3849-3863
Journal of Cachexia Sarcopenia and Muscle
巻: 10 ページ: 1-11
DOI:10.1002/JCSM.12067