研究課題
伸展刺激感受性イオンチャネルの機能解析により心筋症発症機構を明らかにし、筋細胞変性疾患全般に有効な治療薬の開発を目指している。細胞骨格系異常に基づく筋ジストロフィー(筋ジス)・心筋症における筋細胞内は恒常的にCa2+が上昇した状態にあり、その要因の1つとして伸展刺激感受性イオンチャネル(TRPV2)を介するCa2+流入が重要であることを動物モデルにより明らかにしてきた。TRPV2は4量体を形成してチャネル活性の機能を果たし細胞内Ca2+上昇に寄与しているためチャネル活性を持たない変異体の導入、N末ドメイン導入によるTRPV2形質膜濃縮の抑制、あるいは特異的阻害剤が筋ジス、心筋症筋変性に有効であることを報告してきた。さらにTRPV2を特異的に阻害する抗体作成に成功し、正常または心筋症マウスにTRPV2阻害抗体を投与してその安全性と病態治療効果を調べた。正常マウスの心重量、形態ともTRPV2阻害による異常は認められなかった。心拍数、血圧、心収縮能などの循環器系パラメターの異常も認められなかった。またDNAアレイ解析より阻害抗体により悪影響を及ぼすものはなかった。他方、心筋症モデルマウスにおいては心臓の形態、心重量からも阻害抗体の効果が認められた。6か月齢の心筋症マウスは心筋収縮能が低下しており、その後さらに低下するが、阻害抗体の投与によりTRPV2活性を阻害すると、心筋心収縮能の低下が抑制された。一方、筋変性は悪性腫瘍によっても誘導され(癌悪液質)筋肉の委縮、機能低下を伴うことが知られている。癌悪液質筋委縮においてジストロフィン量の減少が報告され、筋ジスと同様の筋変性機構が示唆されており、筋ジス・心筋症における筋変性で関与が認められたTRPV2およびCa2+異常が癌悪液質筋委縮にも関与するか検討したところ、癌悪液質筋委縮にはTRPV2、Ca2+異常の関与は少ないことが判明した。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 5件、 招待講演 1件)
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