研究課題/領域番号 |
26461141
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
田中 君枝 東京大学, 保健・健康推進本部, 助教 (30508065)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 動脈硬化 / 血管外膜 / 血管外膜微小血管 / 血管周囲脂肪組織 / 動脈硬化モデルマウス |
研究実績の概要 |
動脈硬化病変は血管内皮障害に始まり、炎症が血管外膜側へ波及して進展するとされているが、最近では、血管外膜で微小血管増殖が生じ、病変内に炎症細胞などを供給する導管として機能し、血管外膜側の炎症が内膜側へ影響する経路の可能性も示唆されている。動脈硬化病変と血管外膜微小血管(VV)、血管周囲脂肪組織微小血管の構造的関連を、動脈硬化モデルマウスであるアポリポプロテインE (ApoE)欠損マウスを用いて検討した。 まず、高脂食を投与した高齢ApoE欠損マウスの動脈硬化病変を観察した。7週令から高脂食を投与した50週令のApoE欠損マウスの胸部および腹部大動脈、大腿動脈を、トマトレクチン灌流による微小血管染色後、脂肪組織などの周囲組織と一塊にして採取し組織標本を作製して観察した。胸部および腹部大動脈の、脂質コアを伴う拡大した病変でもVV増殖が明らかでない病変を認めた一方、それより径の細い大腿動脈周囲にVV増殖を認めるものもあった。次に、血管周囲脂肪組織とVVの構造的関連を観察するため、緑色蛍光蛋白(GFP)を全身の組織に発現するマウスを用いた実験を行った。20週令のApoE欠損マウスの大腿動脈周囲に、GFPマウスから採取した精巣周囲脂肪組織を巻きつける実験モデルを作成した。今後、50週令で観察する予定である。24週令のApoEマウスの頸動脈を部分結紮し、血管周囲にGFPマウスの脂肪組織を巻き付ける実験モデルも作成し、8週間後に微小血管染色を行い、プラスチック包埋切片を作製して観察した。頸動脈にはVV増殖を伴う新生内膜が形成され、VVの一部はGFP陽性であった。これより、移植した脂肪組織由来の血管細胞がVV増殖に関与する可能性があると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
予定していた実験モデルを作成できた。また、遺伝子改変マウスの交配も開始した。しかし、不妊や哺育に関するトラブルが生じ目的の遺伝子改変マウスはまだ得られていない。現在は、繁殖に適したペアが見つかり、仔マウスを得られるようになっている。
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今後の研究の推進方策 |
1. 高脂食を投与した高齢ApoE欠損マウスの大動脈でVV増殖が明らかでない病変を認めた理由について、経時的変化や、病変の構成成分の差などを検討する。 2. 血管にGFP陽性マウスの脂肪を巻きつける実験モデルを再度作成して結果を確認する。 3. 徐放化した塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)を、野生型マウスの腹膜下腹部大動脈周囲に注入し、VV増殖を強制的に生じさせる実験モデルを用いて、動脈硬化病変形成に重要なのは、VV増殖と動脈硬化病変で認める他のどの要素の組み合せであるのかを検討する。 4. 動脈硬化病変内のマクロファージは、血液中から常に侵入しているのではなく、病変内で増殖しているとする報告がある。上記の、VV増殖を強制的に生じさせるモデルを用いて、VVがこの現象に与える影響を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
遺伝子改変マウスの交配にあたり、不妊や哺育に関するトラブルが生じ、仔マウスを得るのに時間を要した。その為、マウスの遺伝子型決定検査のための試薬の一部の購入時期を次年度に延期した。
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次年度使用額の使用計画 |
現在順調に仔マウスが得られており、遺伝子型決定検査のための試薬を購入する必要が生じているため、昨年度の未使用分を使用している。また、今年度の請求分は、今年度から新たに開始する実験モデル作成のために使用する。
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