研究課題
H28年度は主に、H27年に作成した組織標本の解析を行った。組織標本は、検体採取前に、ビオチン付きトマトレクチンを灌流し、切片作成後に発色させる染色方法により微小血管染色を行った。高脂食を投与した高齢の動脈硬化モデルマウスであるアポリポプロテイン E欠損マウス(ApoE欠損マウス)の、腹部大動脈に自然発症する動脈硬化病変の血管外膜微小血管(vasa vasorum, VV)を観察した。内腔を狭窄する進展した動脈硬化病変を多数認めたが、VVの増殖を伴わないものも認めた。これより、VV増殖を伴わず進展する動脈硬化病変も存在することがわかった。次に、血管傷害モデルによって生じる病変と、血管周囲脂肪組織との関係を評価した。ApoE欠損マウスの頸動脈を部分結紮し、血管周囲に、別のApoE欠損マウスから採取した精巣周囲脂肪組織を移植した。8週間後に観察したところ、脂肪組織移植を行った群では、部分結紮のみの群と比較し、形成された新生内膜の断面積には差を認めなかったが、血管外膜VV数は明らかに多数であった。全身組織に緑色蛍光蛋白(GFP)を発現するGFPマウスから採取した脂肪組織を移植すると、外膜VVは一部GFP陽性であったことから、血管外膜VVの増殖には、移植した脂肪組織に含まれる血管細胞が関与している可能性が示唆された。高コレステロール血症下で自然発症する動脈硬化病変についても調べるため、24週令のApoE欠損マウスの大腿動脈周囲にGFP陽性脂肪組織を移植して23週後に観察したが、このモデルでは外膜VVへのGFP陽性細胞の関与は明らかにできなかった。今後、移植や手術のタイミングを変更するなど、様々なモデルで検討する必要がある。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (1件)
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