研究課題
1. 血管リモデリングに対するオメンチンの作用解明野生型マウスに対して、血管傷害モデルを作成し、アデノウイルスベクターを用いて、ヒトオメンチンの過剰発現を行ったところ、平滑筋細胞増殖抑制作用や内皮細胞脱落後の修復促進作用を有し、血管傷害後の新生内膜肥厚を抑制した。aP2プロモーターを用いた脂肪組織特異的なヒトオメンチン過剰発現マウスを用いた検討では、ヒトオメンチン過剰発現マウスは、血管傷害後の新生内膜増生を有意に抑制した。ヒトオメンチン過剰発現マウスをアApoE欠損マウスと交配したところ、ApoE欠損マウスで認められる動脈硬化巣の形成や、同部位へのマクロファージの浸潤は抑制された。大動脈でのMCP1やTNF-a、 IL6等の炎症性サイトカインの発現も抑制した。2. 血管構成細胞に対するオメンチンの作用とシグナル伝達機構の解明血管平滑筋細胞を用いた検討では、オメンチンは、平滑筋細胞の増殖や遊走能、ERKのリン酸化を抑制した。オメンチン添加により、AMPKのリン酸化が認められ、オメンチンの平滑筋細胞増殖抑制作用やリン酸化ERKの活性抑制作用は、ドミナントネガティブAMPKによる前処置にて解除された。ヒトマクロファージを用いた検討では、ヒトオメンチン添加により、マクロファージの脂肪滴の形成は抑制され、コレステリルエステルの含有量も有意に低下した。LPS刺激に伴うTNF-αやIL-6の発現もオメンチン添加により有意に減弱した。マクロファージに対するオメンチン添加は、Aktのリン酸化を引き起こし、オメンチンのマクロファージにおける抗炎症効果は、ドミナントネガティブAktの前処置にて解除された。3. 動脈硬化におけるオメンチンの臨床的意義の解明経皮的冠動脈形成術を施行した急性心筋梗塞患者の検体にて、オメンチン濃度の測定を終了。今後、心血管イベントとの関連を検討する。
2: おおむね順調に進展している
本研究課題は、新規アディポサイトカイン「オメンチン」の動脈硬化をはじめとする血管病における役割を個体レベル、細胞レベルで解明し、その臨床的意義を明らかにすることである。現在までに、すでに、上記のごとく、オメンチンが直接的な平滑筋細胞増殖抑制効果やマクロファージにおける抗炎症作用を有し、血管リモデリングや動脈硬化形成の抑制効果を有することを見出している。また、その成果もFASEB JやCardiovasc Resに受理されている。したがって本研究は、おおむね順調に進展しているものと思われる。
1.血管リモデリングに対するオメンチンの作用解明ヒトオメンチン過剰発現マウスとApoE欠損マウスを交配させたマウスにAngiotensin II持続投与を行い、大動脈瘤形成や動脈硬化に対する評価を行う。2. 血管構成細胞に対するオメンチンの作用とシグナル伝達機構の解明繊維芽細胞を用いて、血管線維化におけるオメンチンの役割を明らかとする。3. 動脈硬化におけるオメンチンの臨床的意義の解明ST上昇を伴う急性心筋梗塞に対し冠動脈形成術を施行した患者を対象に、オメンチン濃度が主要心血管事故発症と関連を有しているか検討を行う。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件)
Cardiovasc Res.
巻: 110 ページ: 107-117
10.1093/cvr/cvv282.