研究課題
活性酸素種産生酵素Nox4は心血管系細胞を中心に広く発現するが,正常個体(正酸素状態)では発現量を低く抑えられている.虚血刺激により,Nox4の発現は微小血管内皮細胞,周皮細胞に強く誘導される.我々は虚血・再灌流の効果を中大脳動脈閉塞(MCAO)マウス脳梗塞モデルで観察した.MCAO状況下,灌流域における神経細胞は45-60分,アストロサイトは60-90分,周皮細胞は4-12時間で細胞死が生じたのに対し,内皮細胞は1日以上生存することを電顕で証明した.このことは脳血管内カテーテル治療の標的が血管系細胞にあることを示唆する.また,脳梗塞後組織修復の良否は神経機能回復にも影響を及ぼすが,梗塞内部の内皮および周皮の残存比率がその重要な因子となることを明らかにした.Nox4の発現は一過性虚血よりも永久閉塞灌流域の微小血管において高度に認めた.Nox4を内皮(および周皮細胞)に過剰発現させるとIKKリン酸化を介したNFkBの活性化,PHD2の不活性化を介したHIFの安定化が生じ,内皮細胞の生存・増殖に寄与すると考えられた.虚血下・残存内皮におけるこれらの転写因子活性化によりCXCLケモカイン群の発現増加が起こり,好中球遊走が誘導された.このことは通常の虚血再灌流モデルで好中球浸潤が生じないとする過去の報告を上手く説明した.これらは本来血管新生誘導のための生体応答と考えられ,マウス下肢虚血では内皮Nox4過剰発現が血流回復に有利に作用した.一方,急激な血管新生誘導は血液脳関門破綻の原因となるためNox4過剰発現は急性脳虚血病態を悪化せせた.しかし長期の組織修復過程においては有利に作用する可能性があり更なる検討を進めている.シア・ストレス誘導新生内膜形成応答において,内皮Nox4はCXCLケモカイン,MMPsの発現増加などを介して応答を助長し動脈硬化進展に寄与することを明らかにした.
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Stroke
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