研究課題
体血管系において、血行動態ストレスが増加すると、炎症や細胞増殖に関わる多くの因子が活性化し、血管病変が進行することが報告されている。一方、肺循環系の疾患である肺動脈性肺高血圧症の閉塞性血管病変の進展・維持には、腫瘍様異常細胞の増殖が主で、血行動態ストレスの病態的役割は非常に少ないと考えられている。本研究では、申請者が報告した新生内膜・叢状病変(plexiform lesion)などの閉塞性病変を示す疾患モデルに対し、片肺動脈縮窄により血行動態ストレスを軽減することで、閉塞性病変の進展・維持における血行動態ストレスの積極的関与を明らかにする。本研究により、閉塞性病変進展・維持は「腫瘍性異常細胞の増殖による」とされてきた従来の病態生理の理解から、「血行動態ストレスが主である」という理解へとパラダイムシフトが期待される。平成28年度は、肺高血圧モデル動物(Su/Hx/Nxモデル)を作製した。このモデルに対して片肺動脈縮搾を行い、閉塞性血管病変の進展における血行動態ストレスの役割を検討した。すでに、閉塞性病変を多く認める5週目に片肺動脈縮搾を行ったところ、血行動態ストレスを軽減した左肺において病変の退縮とサイトカインの減少を認めた。本研究の研究成果は、日本肺高血圧・肺循環合同学術集会では学会賞を受賞し、米国呼吸器学会総会など多くの学会で採択され、日本循環器学会学術集会においてはシンポジウムで発表する機会を得た。また、本研究の最終的な成果は、Cardiovasc Res誌に掲載された。
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