研究実績の概要 |
平成26, 27年度に我々は骨格筋肥大モデルマウスであるAkt-1過剰発現マウスの骨格筋サンプルを用いて、骨格筋肥大に伴い分泌が亢進するタンパクのスクリーニングを進めた。平成28年度は以下の2つの候補遺伝子に着目し検討を進めた。 1.Heme oxygenase-1 (HO-1): HO-1はヘムの分解酵素であるが、骨格筋で過剰発現することで心筋梗塞後の梗塞領域を縮小することが報告されており、分泌因子として作用する可能性も示唆されている。そこで我々はコントロールマウスと骨格筋肥大マウスに対して片側尿管結紮モデルを作成し、HO-1阻害薬の投与が骨格筋肥大による腎保護作用にどのような影響を与えるかを検討したが、腎臓の炎症・線維化には差を認めなかった。しかし下肢モデルで検討したところ、骨格筋肥大マウスで認められた血流改善効果はHO-1阻害薬の投与により、完全にキャンセルされた。Heme oxygenase-1の骨格筋組織特異的ノックアウトマウスを作成し、血流改善の程度を評価したが、コントロールマウスと差を認めなかった。組織を詳細に評価すると、HO-1の発現は内皮細胞とマクロファージで増加していることが明らかとなった。このことから骨格筋肥大は周囲の内皮・マクロファージ内のHO-1の発現増加を介して、血管新生を促進することが明らかとなった。 2.Thrombospondin-2 (TSP-2): TSP-2も骨格筋で過剰発現することで、腎保護作用を発揮することが報告されている。我々はTSP-2が骨格筋肥大モデルマウスの骨格筋組織のみならず、血中でも増加していることを確認した。またAkt1を過剰発現した培養骨格筋細胞の上清でもTSP-2が増加していることを確認した。今後、骨格筋特異的TSP-2ノックアウトマウスを作製し、腎障害モデルにおける表現型を解析する予定である。
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