研究課題
平成26年度内で我々は、肺がん臨床検体約50症例からRNA抽出ならびにcDNA合成とゲノムDNAの回収を行った。そのうち良質なcDNAが回収できた症例について、まずは2症例についてcDNA発現レトロライブラリーを構築し、マウス線維芽細胞3T3を用いたfocus formation assayを施行した。その結果、数個の候補遺伝子を同定しており、現在それぞれの遺伝子に関して機能解析実験を遂行中で、真にがん遺伝子であるかどうかの検証を進めている。さらに引き続き今年度も、症例数を増やして本手法による発がん遺伝子の同定を目指していく。また、約40症例80検体(腫瘍部(がん部)ならびに非がん部(正常部))については、次世代シークエンサーを用いてゲノムDNAの全エキソン領域の変異解析を行った。得られた結果から、がん部と非がん部のデータを比較することで非がん部(正常部)にはなくがん部にのみ認められるアミノ酸置換を伴う遺伝子変異を同定し、同遺伝子変異が実際に肺がんの発がん原因となり得るかどうかを検証している。EGFR阻害剤やALK阻害剤などの肺がん原因遺伝子をターゲットとした分子標的治療法の登場により、肺がんの治療法は大きく変貌を遂げた。直接的な原因遺伝子を同定することこそが治療に直結することが示された結果であり、今回のデータ解析から新たな肺がん原因遺伝子とその分子標的治療について新たな提言を世界に発信できるものと期待される。
2: おおむね順調に進展している
予定通りに検体収集が行われ、cDNA発現レトロライブラリーの構築や次世代シークエンサーにおける解析が順調に進行中である。
これまでに得られた解析結果をもとに、肺がん発症メカニズムに関わる原因遺伝子候補について機能解析を進めていく予定で、新たな肺がん原因遺伝子が同定できた場合はその治療法についても新たな提言を行う。また、ALK阻害剤で治療中に耐性を獲得した症例について、cDNA発現ライブラリーを構築してそれを用いて耐性機構を明らかにすることも目指す。
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