研究課題
H27年度内で我々は、昨年度肺がん臨床検体から構築したcDNA発現レトロライブラリーを用いたマウス繊維芽細胞3T3 focus formation assayから得られた、肺がんの原因となる候補遺伝子について、そのがん化能の機能解析を引き続き行った。現時点で真のがん遺伝子かどうかを特定することに難渋しているが、H28年度も引き続き検証していく。さらに昨年度次世代シークエンサーを用いて肺がん38症例76検体(腫瘍部と非腫瘍部のペア)の全エクソン解析を施行したが、加えてそれらの腫瘍部検体からRNAを抽出しRNAシークエンスも施行した。その結果、腫瘍部検体でのみ発現が認められているアミノ酸置換を伴う遺伝子変異や、融合型遺伝子を数個同定した。現在それらの候補遺伝子が真の発がん遺伝子かどうかどうかの検証を進めている。また、肺がんの原因遺伝子であるEML4-ALK陽性症例に対して、その治療薬であるALKチロシンキナーゼ活性阻害剤(クリゾチニブ)を投与後に、一度は薬剤に奏効したもののその後再増悪(薬剤耐性期)した症例の検体を入手した。本症例の治療前(薬剤感受性期)と耐性期検体の全エクソン解析を施行した。これらのデータを元に、感受性期と耐性期とで発現している遺伝子のプロファイリングを比較検討し、ALK阻害剤耐性の原因となり得る遺伝子異常を解明することで、新たな提言を世界に発信できるものと考える。
2: おおむね順調に進展している
予定通り検体収集ならびにゲノム解析が行われ、そこから得られた解析結果をもとに検証実験が進んでいる。
発現ライブラリーや次世代シークエンサーを用いた解析から得られた、発がんに起因すると考えられる候補遺伝子について機能解析を行い、真のがん遺伝子であるかどうかを検証する。またALK阻害剤耐性患者検体からもcDNA発現ライブラリーを構築し、ALK阻害剤耐性機序を解明することを目指す。
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Sci Rep
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