研究課題
前年度までに次世代シークエンサーを用いて肺腺がん38症例76検体(腫瘍部と非腫瘍部のペア)の全エクソン解析を行っていたが、本年度はさらに5症例を追加解析し計43症例86検体の全エクソン解析から得られたデータをもとに、腫瘍部検体でのみ発現が認められているアミノ酸置換を伴う遺伝子変異について肺がんとの関連を検証した。さらに本43症例について腫瘍部検体からRNAを抽出しRNAシークエンスも施行した。その結果43例中7例においてNKX2-1/TTF-1遺伝子に8種類の非同義変異の存在が認められた。NKX2-1/TTF-1により転写活性化される標的遺伝子であるMYBPHを指標としたルシフェラーゼアッセイにおいて、これら8つのNKX2-1/TTF-1変異体はいずれも失活変異体であることが確認された。これら7症例はいずれもTTF-1免疫染色が陰性でうち5例にKRAS変異が認められ、組織学的にはNon-TRU typeの肺腺癌に分類され、同タイプに特徴的な失活変異体であることが示唆された。さらにNKX2-1/TTF-1遺伝子のメチル化をバイサルファイトシークエンスにより検討したところ、高度にメチル化されていることも確認され、遺伝子変異ならびに高メチル化によりTTF-1の発現が抑制されていることが解明された。同コホートのRNAシークエンス解析結果からは、3つの新たな融合型遺伝子を同定したものの現時点ではそのがん化能を確認するには至らなかった。本融合型遺伝子は分子標的薬治療のターゲットとは考えにくいものの今後の解析により何らかの肺がん発症機構との関連が認められる可能性がある。
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