研究実績の概要 |
当施設に通院中の肺MAC症例を対象に血清献体の保存を進め、炎症反応の指標(WBC、CRP、ESR、SAA)、鉄代謝の指標(Fe、UIBC、TIBC、フェリチン、ヘプシジン)を、それぞれ検査した。さらに、同一検体について、マルチプレックス・サスペンションアレイ法による、サイトカインの網羅的解析を行った。 調査の対象は、成人の肺MAC症15例で男性2例、女性13例、年齢の中央値は69歳であった。これらの症例を、病型により線維空洞型 7例と、結節・気管支拡張型8例の二群に分類し、上記の項目について、二群間の比較を行った。 その結果、鉄代謝マーカーについては、血清鉄(線維空洞型51.5±34.1 vs 結節・気管支拡張型96.8±30.8, p=0.02)、UIBC(189.8±37.2 vs 123.1±51.9, p<0.01)が線維空洞型では有意に低値であったが、ヘプシジン値については、二群間で有意差は見られなかった。 一方、各種サイトカインについて、二群間で有意差が認められた項目はIL-5(5.2±5.6 vs 結節・気管支拡張型 1.1±1.3, p=0.02)、IP-10(1110.8±643.5 vs 509.3±219.6, p<0.01)、VEGF(607.2±232.6 vs 340.1±199.8, p=0.02)、G-CSF(70.7±49.3 vs 19.0±11.0, p<0.01)の4項目であった。 ただし、これらの結果については、線維空洞型ではCRP値が有意に高く、遷延する慢性炎症に伴う変化である可能性も否定できず、次年度以降の課題と考えられた。
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