新潟大学医歯学総合病院(825床)で2013年4月から2016年3月までの期間に、肺MAC症と診断が確定した成人症例を対象に、その臨床背景と一般検査項目、鉄代謝マーカーHepcidinの動態を調査した。さらにLuminex bead-based assaysにより、38種類のサイトカインの血中濃度を測定し、これらの結果について肺MAC症の病態による比較、検討を行った。 対象は27例で、年齢の中央値は71歳(IQR 65 - 78歳)、22例(81.5%)が女性で、病型は線維空洞型が8例(29.6%)、結節・気管支拡張型が19例(70.4%)であった。対象症例のうち、貧血は(10例、37.0%)で認め、血中Fe 77 (IQR 42-108) µg/dL、トランスフェリン飽和度 30.6 (IQR 7.2 - 39.2)%、Hepcidin-25 19.3 (IQR 6.2 - 41.1)ng/mLであった。Hepcidinについて、健常者を対象とした調査では20 ng/mL未満であり、全体に高値の傾向がみられた。また、ヘプシジンはCRP、SAA、ESRと正の相関を示し、慢性炎症に伴いヘプシジンの産生が更新し、血清鉄濃度を低下させるとともに、慢性貧血の病態に密接に関係しているものと考えられた。 なお、網羅的サイトカイン解析の結果、血清Interferon γ-induced protein 10(IP-10)濃度は画像スコア(相関係数r = 0.7)、CRP(r = 0.54)とは正の、BMI(r = -0.5)、プレアルブミン(r = -0.5)、血清鉄(r = -0.4)とは負の、いずれも有意な相関を示し、各種サイトカインの中でも、IP-19は肺MAC症の病変の進展と慢性炎症、これに伴う栄養障害、鉄代謝異常と貧血の病態に重大な役割を果たしている可能性が考えられた。
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