研究課題/領域番号 |
26461158
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
関 雅文 大阪大学, 医学部附属病院, 講師 (80432970)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | インフルエンザ / 肺炎 / NETs / 好中球 / ヒトメタニューモウイルス / 真菌 |
研究実績の概要 |
本研究は、インフルエンザウイルス感染症および関連する細菌性肺炎において、個体側の因子=免疫因子が過剰に反応していることで、かえって組織障害を促進し、肺炎の重症化に寄与している可能性を検討することにある。特に好中球を中心とする免疫の活性化:NETs (Neutrophil Extracellular Traps)に焦点を当て、さらに臨床上の治療および感染予防・重症化対策へフィードバックすることを大きな目標としている。 この点において、肺炎では、NETsの出現が炎症の重篤度や遷延性と正の相関を示すことを見出し、インフルエンザに関する免疫系の関与についても、以前から過剰免疫を抑制することで重症化防止効果が示唆されているマクロライド系抗菌薬の臨床研究を行い、抗インフルエンザ薬単独よりもやはりマクロライド系薬併用の方が、発熱期間短縮など一定の効果が見られることを確認した。マウスモデルを用いた研究では、季節性インフルエンザと2009年のパンデミック時に採取された比較的高病原性のインフルエンザウイルス株を用いて、肺炎球菌との重複感染実験を行い、やはり高病原性ウイルスでは、サイトカイン誘導能が高く、免疫系がかえって組織障害に働く可能性を報告した。 また、一方で、微生物側の重症化因子として、重症肺炎や敗血症などにおける病原菌の解析も進め、最新の次世代シークエンサーを用いた症例解析では、新たな耐性菌種や重複病原体の存在を報告した。特にアスペルギルスやクリプトコックスなど真菌感染症が重症肺炎の発症に関与する可能性を確認した。 これらの制御のために、普段からの感染制御活動やワクチンを中心とした予防、病原菌のサーベイランスの重要性を改めて認識し、地域や院内での耐性菌の分布状況なども報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年もおおむね目標を達成することができた。肺炎症例を解析し、NETsの出現と炎症の重篤度、遷延度との相関を解析し、やはり一定の相関を示すことを報告することができた。免疫系を標的としたインフルエンザの治療や重症化予防に関しても、過剰免疫を抑制することが以前から示唆されているマクロライド系抗菌薬の臨床研究において、やはりその併用が抗インフルエンザ薬単独よりも効果的であることを確認した。 重症呼吸器感染症の解析においても、緑膿菌による市中肺炎症例の他、次世代シークエンスを用いた解析にて、糸状菌の合併による難治性アレルギー性肺真菌症や、通常は肺炎像を呈さないクリプトコッカスによる重度の免疫不全肺炎を報告できた。 これらを受けた感染制御活動の一環として、緑膿菌による内視鏡汚染やカンジダ血症の地域内データも報告した。
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今後の研究の推進方策 |
今後も引き続き、好中球を中心とした過剰免疫系の関与の検討を、NETsを中心に進めたい。マウスモデルを用いた解析を行うと同時に、臨床症例を蓄積しながら、一例一例の詳細な解析を微生物学・免疫学の両面から進めていく予定である。 さらに、インフルエンザと相乗効果的に重症化を惹起することが知られている黄色ブドウ球菌:特にペニシリン薬耐性のMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)は、院内感染の最も頻度が高い病原菌としても知られているため、この院内や地域での分布状況や、病原性の確認も、遺伝子学的手法も用いて進めていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、実験・研究がスムーズに施行され、他機関との共同研究の形でも進んだため、業績は大であったが、支出が予想よりも少なく済んだことが理由として考えられる。
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次年度使用額の使用計画 |
来年度は、今年度の業績を学会発表や論文でも順次発表予定のため、支出が増大することが予想される。また、大阪大学より東北薬科大学へと異動したため、それに伴う実験・研究の立ち上げにも、前年度繰り越した分を充てたいと考えている。
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