研究課題
胸膜中皮腫の中心的化学療法剤としてペメトレキセドが使用されているが、本剤に対する耐性を獲得した患者には十分有効な治療方法が存在しない。このためペメトレキセド耐性克服方法の開発は緊急の課題である。本研究では、我々が独自に樹立したペメトレキセド耐性胸膜中皮腫株を用いて、その遺伝子発現プロファイルを親細胞株と比較することによりペメトレキセド耐性を付与する分子を明らかにし、これを制御すると共に、我々がこれまで検討してきたADCC機序増強による抗EGFR抗体療法と組み合わせることにより、より有効なペメトレキセド耐性克服治療方法を開発することを目的として本研究を行った。平成26年度は、ペメトレキセド感受性細胞株と、同細胞を持続的、段階的に高濃度セツキシマブ存在下で培養しクローニングし、樹立した耐性細胞株における、DNAマイクロアレイデータを解析した。その結果、ペメトレキセドに耐性化した中皮腫細胞は、EGFR経路の発現は抑制されていたが、PI3Kの発現が増加していた。平成27年度はPI3K経路の阻害剤PI3K-inhibitor BEZ235の効果を確かめた。平成28年度は、PI3K経路の他にマイクロアレイ解析で明らかになったGPCRとその下流分子、さらには低分子G蛋白であるRho、Racのペメトレキセド耐性化に及ぼす影響について検討した。総合すると中皮腫細胞はペメトレキセドに耐性化すると、増殖のドライブがEGFRからGPCRとその下流分子、低分子G蛋白系に移るものと考えられた。次にはペメトレキセド耐性化細胞の増殖を抑えると考えられる。本結果はペメトレキセド耐性化中皮腫細胞に対する新しい治療標的を示唆するものである。
2: おおむね順調に進展している
ほぼ当初計画どおり、耐性細胞株のDNAマイクロアレイによる網羅的発現解析の結果から、新たな分子標的をみいだすことができた。ことにPI3K経路阻害剤のペメトレキセド耐性株への効果は明らかであった。このことから研究計画は順調に進行していると考えた。
研究が進んだP3K経路とその阻害剤のペメトレキセド耐性株への効果の他に、マイクロアレイ解析の結果からみいだした、GPCRとその下流分子、低分子G蛋白系の検証を行う必要がある。このため当初計画を半年程度延長し、再実験後、論文作成投稿としたい(平成29年8月頃)。分子標的として新規であり、論文アクセプト(平成30年3月頃予定)の後、成果として公開したい。
当初計画で平成29年3月までに、ペメトレキセド耐性化中皮腫細胞の新しい分子標的経路G蛋白質共役受容体-PI3K経路について実験を行い、成果をとりまとめ投稿の予定であった。しかしながら、この成果検証過程で、実験データにばらつきがみられた。このための検証実験の費用が、次年度使用額として生じた。
当初計画を半年程度延長し、再実験後、論文作成投稿としたい(平成29年8月頃)。分子標的として新規であり、論文アクセプト(平成30年3月頃予定)の後、成果として公開したい。
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