研究課題/領域番号 |
26461164
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
高橋 弘毅 札幌医科大学, 医学部, 教授 (60231396)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 肺サーファクタント / 肺傷害 |
研究実績の概要 |
肺胞上皮細胞由来の肺サーファクタントは、肺胞虚脱防止作用に加え、多様な病原体に対する自然免疫調節作用を有することで知られている。さらに最新研究によって、感染症以外の炎症性病態において抗炎症・抗線維化作用を示すことが明らかになってきた。一方、急性肺傷害の重要な病理学的変化であるびまん性肺胞傷害(DAD)は致死的転帰を予見させ、肺胞上皮細胞障害がその病態の根底にある。また、種々の呼吸器疾患において、アレルギー性炎症や肺線維化もまた、疾病を進行させる重要な病態である。 本研究では、肺サーファクタント蛋白質(Sf)の新作用である「抗炎症・抗線維化作用」に着目し、Sfが急性肺傷害、肺線維化、アレルギー性気道炎症に対する保護的作用を示すことを明らかにし、最終的にはSfリコンビナント製剤を治療薬として臨床応用するための橋渡し研究を行う。 初年度にSP-A(-/-)、hSP-A1 or hSP-A2発現マウスを用いた肺傷害/肺線維化/アレルギー性気道炎症を作成する予定としていたが、SP-A(-/-)をブレオマイシン感受性の高いC57BL/6マウスにバッククロスを行うため時間を要している。週齢8週のSP-A(-/-)マウス、及び野生型C57BL/6マウスに経気道的にLPS、ブレオマイシンを投与し肺傷害モデルおよび肺線維化モデルを作成した。マイクロスプレイヤーを用いてブレオマイシンを経気道投与したところ、薬剤投与7日目に気管支肺胞洗浄液中の好中球数、TNF-αの増加を認め、SP-A(-/-)マウスでは有意に増強していた。ホルマリン固定肺組織の病理組織学的評価では薬剤投与21日目に肺組織の線維化を認め、SP-A(-/-)マウスでは病変の増悪がみられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究開始の準備としてSP-A(-/-)マウスと肺傷害/肺線維化モデルを作成し、その評価を行うことが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に作成したSP-A(-/-)マウス、及び野生型C57BL/6マウスの肺傷害モデルおよび肺線維化モデルに肺コレクチン(SP-A、SP-D)を投与し、その効果を評価する。Native SP-A、native SP-Dはシリカ投与で刺激したラットの気管支肺胞洗浄液より分離精製する。また、recombinant SP-A、recombinant SP-DはCHO細胞を用い作成する。肺コレクチン投与の有無による生存率、組織学的変化を比較検討する。C57BL/6バックグラウンドのSP-A(-/-)が作成できたので、hSP-A1 or hSP-A2発現マウスの作成を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
SP-A(-/-)、hSP-A1 or hSP-A2発現マウスを用いた肺傷害/肺線維化/アレルギー性気道炎症を作成する予定としていたが、SP-A(-/-)をブレオマイシン感受性の高いC57BL/6マウスにバッククロスを行うため時間を要したため、マウスの使用数が少なくなっている。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度にhSP-A1 or hSP-A2発現マウスの作成を行うこととする。また、当初の予定肺傷害モデルおよび肺線維化モデルに肺コレクチン(SP-A、SP-D)を投与する。
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