研究課題
難治性喘息患者を対象に、経気管支鏡下気道生検や手術検体を用いて気道組織を採取し、気道におけるペントシジンの局在を明らかにした。また、健常者や軽症喘息患者をコントロールとして気道内でのペントシジン含有量を比較検討した。同時に採取した血液・誘発喀痰中のペントシジン量の測定を通して、気道組織の老化マーカーとしてのペントシジンの非侵襲的定量化におけるこれらの検体の利用可能性を検討した。また、マイクロサンプリング法により、中枢気道と末梢気道から個別に気道上皮被覆液を細径内視鏡を用いて分離採取し、中枢気道と末梢気道レベルでのペントシジン量の差違を比較した。さらに、今回検体を採取した全ての対象者に対して、臨床的諸指標や肺生理学的指標を測定し、各指標と気道におけるペントシジン量との相関関係を明らかにし、加齢に伴う生理的肺機能低下、及び喘息の難治化がもたらす気道反応性の生理的異常に対するペントシジンの関与を明らかにした。次に、罹病期間や喫煙量と気道におけるペントシジン量との相関関係を明らかにすることから、喘息の難治化因子とされる各種要因と気道のペントシジン蓄積量との直接的な関連性を明らかにした。これまで未解決であった肥満と喘息の難治化の関連等についても、アディポカインと気道のペントシジン集積動態の関連性から、我々独自の仮説を構築するための基礎的知見を確立した。このような結果を基に、難治性喘息患者においてペントシジン架橋がもたらす肺の生理学的検査異常の実態を明らかにし、難治性喘息の病態生理学的特徴を気道の組織老化という視点から構築された分子基盤を確立した。
2: おおむね順調に進展している
予定通り検体の採取及び解析が進行しており、概して我々の仮説通りの結果が得られている。従って、次年度以降も予定された研究計画に沿って、検体の採取及び、その解析を進めてゆく。
軽症~難治性喘息患者の血液・誘発喀痰・気道上皮被覆液中のペントシジン濃度の測定、さらに気道組織中のペントシジン含有量とその局在を明らかにし、ペントシジンの量的な差違がもたらす肺の生理機能に及ぼす影響を検討してゆく。また、肺の組織検体を用いて、肺の構成細胞の老化の評価法としての免疫組織化学を用いたhTERTの発現量の解析、及びテロメア長の測定を行う。さらに、細胞外マトリックスにペントシジン架橋を有する気道組織を用いて、各種の気管支収縮薬や拡張薬に対する反応性を測定すると共に、ペントシジン架橋形成における酸化ストレス・炎症性サイトカイン等の役割を検討する。このように肺構成細胞と細胞外マトリックスにおいて個別に老化の指標を解析するとともに、非生理的老化から見た難治性喘息の病態を反映するバイオマーカーの同定と気道における抗老化医療を実践するための新規薬剤の探索も進めてゆく。
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