研究課題
気管支鏡下気道生検及び手術組織から得られた検体を用いて、肺構成細胞の老化の指標であるhTERT(Human telomerase reverse transcriptase)発現量の定量化を行った。第2に、軽症及び難治性喘息患者の気管支鏡下気道生検組織を用いて、気道におけるペントシジン含有量と気道反応性の生理的異常の関連性を明らかにした。さらに、この系を発展させて、気道におけるペントシジン蓄積量に及ぼす炎症性サイトカインや酸化ストレスの関与を明らかにした。第3に、気道リモデリングとペントシジン架橋形成の関連性を明らかにした。そして、細胞外マトリックス過剰産生に関わる成長因子間の相互作用やコラーゲン生合成のバイオマーカーに関する複数の知見を明らかにした。特に、気道リモデリングの進展においてペントシジン架橋形成が並行して進行することを明らかにした。これらの知見から、今後の気道リモデリングの評価においては、基底膜網状層の肥厚度のみに注力してきたこれまでの研究スタイルから、基底膜の細胞外マトリックスの質的な変化の重要性を喚起させ、気道リモデリング研究の新しい方向性を示した。そして、気道リモデリングの治療は困難であるという認識を打破し、質的な治療の可能性を示した。このような我々の知見を基に、ペントシジン架橋から生理的架橋への転換を誘導する薬剤の可能性を探求する検討を開始した。気道炎症の治療薬としてのステロイド、抗炎症性分子標的薬、抗酸化薬等の気道組織の抗老化作用の可能性に関しても検証した。また、既存のペントシジン合成阻害薬の有効性を確認することから、新規薬剤の探索へと進めている。
2: おおむね順調に進展している
予定通り検体の採取及び解析が進行しており、概して我々の仮説通りの結果が得られている。従って、次年度以降も予定された研究計画に沿って、検体の採取及び解析を進めてゆく。
今回の研究成果から、難治性喘息の気道反応性の特徴である非可逆的気道閉塞の機序を明らかにすることも可能であり、近年話題のCOPDと喘息の合併疾患であるオーバーラップ症候群の病態を初めて論理的に説明する理論的支柱の確立が可能である。。さらに、難治性喘息に対する画期的で斬新な治療法の開発や創薬の可能性を現実化するという目標に向けての新たな展開も計画している。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 3件)
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