研究課題
今回の研究においては、第一に、気道組織の老化の定量化法を確立した。肺の構成細胞の老化の評価法としての免疫組織化学を用いたhTERTの発現量の定量化、及びテロメア長の測定、並びに細胞外マトリックスの老化評価法としてのペントシジンの免疫組織化学的検討を行った。次に、これらの定量化された老化の指標と喘息患者の気道反応性を反映する生理学的検査所見との関連性を検討することにより、気道組織の老化が及ぼす気道反応性の生理学的特性を明らかにした。そして、このような検討を通して、喘息の難治化と気道組織の老化との直接的な因果関係を明らかにした。また、これまで提唱されてきた喘息の難治化要因が誘導すると思われる気道組織の老化のエビデンスを明確なものとした。第三に、気道組織の老化の定量法を臨床的に応用可能なものとするために、誘発喀痰・気道上皮被覆液から得られたペントシジン濃度と免疫組織学的な評価による肺の構成細胞及び細胞外マトリックスの老化の指標との関連性を検討し、誘発喀痰・気道上皮被覆液中ペントシジン濃度測定の臨床的有用性を確立した。第四に、我々が明らかにした知見を基盤として、抗加齢の立場から肺の生理機能維持のための有効な対策や過剰な非生理的加齢反応がもたらす難治性喘息の新規治療戦略を構築した。このように、肺の構成細胞の過剰な老化、及び老化を基盤とする細胞外マトリックスにおけるペントシジン架橋の形成等、気道組織の老化を多面的かつ包括的に評価するという手法を用いて、難治性喘息の病態生理学的特性を明らかにした。また、今回の研究成果から、難治性喘息の気道反応性の特徴である非可逆的気道閉塞の機序を明らかにすることが可能となり、COPDと喘息の合併疾患であるオーバーラップ症候群(ACOS)の病態を初めて論理的に説明する理論的支柱を構築した。
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