研究課題
本年度はまず、アスペルギルスにより誘導される新規アレルギー関連分子の特定のためのin vitroの系の基礎検討を行った。まず、複数の抽出法の異なるアスペルギルス抽出抗原を用いて気道上皮細胞(NCI-H292)を刺激し、発現誘導が確認されているムチン遺伝子であるMUC5ACのmRNAの発現を比較検討した。この検討では抽出法のみならず、抽出抗原のロットによってもMUC5ACの発現に差を認めていた。この結果により真菌抗原の抽出に用いた真菌株によっても差がある可能性(含有するプロテアーゼの活性による違いである可能性)が示唆された。さらにMUC5ACの発現誘導が確認されたアスペルギルス抽出抗原を用いて既知のアレルギー関連分子の気道上皮細胞での発現誘導をスクリーニングした。MUC5AC以外にもVEGF、TGF-α、TARC、MDC、TSLP、COX-2などの複数のアレルギー関連分子のmRNAの発現誘導が確認された。さらにこのうちVEGFはMUC5AC同様にその発現がセリンプロテアーゼ依存性であった。しかし、その発現の時間経過は異なり、MUC5ACでは刺激8-24時間でmRNA発現が増強したのに比し、VEGFのmRNAは刺激後3-6時間で誘導された(その後の蛋白の増強も確認)。その他にもTGF-alphaをはじめ、刺激後3-6時間で最大のmRNAの発現誘導が認められる分子が多数認められ、刺激後3-6時間が新規分子の発現の検討に有用と考えられた。
3: やや遅れている
真菌抽出抗原間で大きな隔たりがあり、当初想定していた検討条件では不適切であり、適切な陽性コントロールの同定、実験条件に設定に時間を要した。しかし、この間の検討で、新規分子の同定のための至適条件が判明した。
MUC5AC、VEGFを陽性コントロールとしてアスペルギル真菌抗原により気道上皮細胞で発現される新規アレルギー関連分子をマイクロアレイを用いて行う。申請者らによりこの間施行された本邦初のアレルギー性気管支肺真菌症(ABPM)の全国調査結果の検討から、画像で高輝度を呈する粘液栓の重要性など、改めて特徴的な病態が明らかにされた。それにより重要性が推察されたムチン形成に関与する糖転移酵素群など、病態に直接関与することが推察される遺伝子群をバイオインフォマテックスを用いて網羅的に検討する。
in vitroの適切な条件設定の遅れからマイクマイクロアレイを用いた新規分子の検討が次年度の施行となった。
マイクロアレイを用いた新規分子の検討を行い、見出された分子に対し、個々に検証実験を行う、さらに疾患に関連する遺伝子群をバイオインフォマテックスを用いて検討する。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)
Allergol Int.
巻: 63 Suppl 1 ページ: 13-22
10.2332/allergolint.13-OA-0632
巻: 64(2) ページ: 175-80
10.1016/j.alit.2014.07.003. Epub 2014 Oct 22.